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「ひるまず客と会え!」「ノーロジックでナゾの40pt太文字パワポは客に刺さる」ヤバすぎる修羅場を潜り抜けたコンサルたちの“最強トラブル解決法”

メン獄×樋口恭介 特別対談

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, 社会, 働き方

note

メン獄 もう三国志の世界だね。

樋口 まあやり過ぎて、訴えられかけたって言ってましたけど(笑)。僕は常々コンサルティングで一番大事なのは、愛だと思っていて、Sさんは本当に愛に溢れた人だった。相手の意図を汲み取るのがうまいし、自分の思いを伝えるのも的確で。

メン獄 確かに愛があれば、相手とちゃんと向き合って、独りよがりにならずにいられる。

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コンサルで疲弊したって人の命に別状はない

樋口 ところで、メンさんはよく鋼のメンタルって周りからも言われてましたよね?

メン獄 俺、怒られてもあんまり聞いてないのね。ほら、メタルのライブ聞きに行ったら別にでかい音が鳴ってても驚かないでしょ? 重大なトラブルが発生している現場って、そりゃこちらも悪い部分はあるけど、そもそもの前提がめちゃくちゃなんだもん。

 それに樋口さんもよく言ってるけど、SF的な発想で、ドでかい宇宙の次元で物事を見たら、仕事のトラブルなんてどうでもよくなるんですね。

樋口 確かにそう。僕は帰りの電車でよく本を読んでて、たとえばSF以外にも、レヴィナスの哲学書とかを読むんです。すると、親族全員がナチスに殺された話とかが出てきて、マジでヤバいことが起きているわけです。そういう本を読みながら、生と死をわけるものって何だろうとか、存在と非存在ってなんだろう、みたいなことを考えていると、怒られ案件なんて大した事ないじゃないかと思えてくるわけです。つらいとか苦しいとか、レヴィナスの前でも同じことが言えるのか?みたいな。

メン獄 人死なないですしね。今、医療系の会社に転職して、人の生き死にを預かっている医師たちの仕事を目の当たりにしていると、コンサルで疲弊したって別に人の命に別状はないぞと実感します。

撮影 細田忠/文藝春秋

余剰成分はビジネスのおもしろさでもあり、大変さでもある

 ちょっと話変わるけど、最近流行りの人工知能についてはどう思います? 将来AIでコンサルタントの仕事はなくなる?

樋口 ChatGPTがいくら進化しようがなんだろうが、やっぱり現場には人間が必要です。誰がいつまでに何をやるのかというスコープがあって、できなければ人が怒るし、うまく行けば、人が満足して物事が回り始める。仕事の本質はコミュニケーションですから。

メン獄 前提として、多くの場合、お客さんも答えを持ってない中で発注するんですよね。その漠然とした思いにコンサルタントも全力で応えようとするんだけど、それを真面目にやり過ぎると爆死する。今期どこまでやるか、やったその先に何があるか? お客さんと一緒に謎解きして、並走できるのは人間ですよね。

樋口 それに人には欲望があるので、常に“余剰”が発生する。できればここまで行きたいとか、昨日までのことは全部間違いでやっぱりこの方向だ、みたいな思いつきによる余剰成分がどうしてもあって、それがビジネスのおもしろさでもあるけど、大変さでもある。そしてその大変さに付いていくのは、生身の人間にほかならない。