かつてお台場はおしゃれな場所だった。行くには、車か、ゆりかもめという究極の選択しかないにもかかわらず、観覧車、レインボーブリッジ、球体展望室のあるフジテレビ……と夜景を求めて人々が繰り出した。ところがいまは、2020年の東京オリンピックまでに盛り上げる使命がありながら、お台場遠いよねぇ……と億劫感が募り、それと関係あるのかないのかはわからないが、現在放送中のフジテレビ制作のドラマの視聴率も低い。
1月期の連続ドラマでいうと、フジのドラマ、月9『海月姫』は平均6.1%(最低は4.9%)、木曜劇場『隣の家族は青く見える』は、5.9%(最低は4.6%)(いずれもビデオリサーチ調べ 関東地区 3月6日現在)と、テレビドラマの視聴率が低下の一途をたどっていると言われるサンプルのひとつに残念ながらなっている。
とはいえ、ドラマのレベルは決して低いわけではないと、テレビドラマの取材や評論を90年代から長らく生業にしている私はそう思う。
SNSで話題になる要素満載なのに……
『海月姫』は、映画化もされた東村アキコの人気漫画が原作で、不器用で内向きな人たちがもどかしいコミュニケーションを通して、自分は自分でいいと肯定していく物語はキュンキュンする。芳根京子、瀬戸康史、工藤阿須加、賀来賢人と朝ドラ出身俳優をそろえたメジャー感もあり、顔が命のはずの女性タレントに漫画のキャラそっくりに目を前髪で隠したまま演じさせるなど、チャレンジもしている。とりわけ、瀬戸康史演じる女装男子は眼福だ。
『隣の家族は青く見える』(となかぞ)は、松山ケンイチ、深田恭子が妊活する夫婦を、涙なくしては見られないほどピュアに演じて、女なら、こんな旦那さま、男なら、こんな奥さんが欲しいなあと思わせる。さらに、彼らと同じいまどきの共同住宅に住む3組の家族もキャラがほどよく立っている。コンサバ夫婦と事実婚カップルとゲイカップルの3組で、とりわけ、眞島秀和と北村匠海演じるゲイカップルの仲睦まじさが嬉しいほどに目の毒。
『海月姫』も『となかぞ』も、SNSで話題になる要素満載だが、なぜ、こんなに視聴率は低いのだろうか。身も蓋もない話だが、おそらく、『海月姫』は日本テレビの水10、『となかぞ』はTBSの火曜ドラマでやっていたら、もうちょっと取れたのではなかろうか。フジテレビには近寄るな的な風評被害のようなものだと思う。フジテレビネガ伝説についてはここでは詳しく触れないが、その代わりに、フジテレビのここが惜しい点を挙げたいと思う。