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「ボーッと火を眺めながら“滅亡寸前”を生きる」成田悠輔が明かした〈最近、あまり仕事をしない理由〉

「ボーッと火を眺めながら“滅亡寸前”を生きる」成田悠輔が明かした〈最近、あまり仕事をしない理由〉

2023/12/11
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 子供の頃から体にガタがきている中高年のような状態が続いているので、ガムシャラに何かをやることはできません。いかにやる気を出さず、いかにがんばらないかをいつも考えています。その結果、いつもボーッと空を眺めたり、フラフラと散歩してどこかに消えてしまう人になってしまいました。

(2)1つの場所に居つづけない

 日本とアメリカを行き来する生活を送っていますが、これが性に合っているみたいです。同じ場所にいるとすぐに飽きるし、ダレる。数ヶ月に1度は移動したい性格です。

 日本でも自宅と仕事場を往復するような生活はしていなくて、毎日違った時間に寝起きして、色んな場所をぐるぐる回るように生きています。深夜3時くらいのカフェや街中華が一番快適な仕事場ですね。場所も時間もぐちゃぐちゃです。

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「ニューヨークの路上を徹夜で転々としながら仕事していたある日の朝4時、寒くて駅の中に避難したらバイオハザードだった」(成田氏)

 大学の講義以外の仕事の大半は、遠隔でも移動しながらでもできるものばかりです。研究でも、出演でも、企業や自治体との仕事でもそうです。なので、ほとんど旅行のような生活をしています。

「旅行」「私生活」「仕事」とはっきり切り分けをしないで、いつも全部のことがカレーとライスのように混じっているのが好みのスタイルです。

 仕事についても、なるべく「同じ場所にいない」ことを意識しています。いろんなタイプの仕事を坩堝のように混ぜ合わせるようにして、「何をやっているのか分からない人」として存在したい。ファッション誌でモデルごっこをやることもありますし、浅草演芸ホールで漫才をすることもありました。

 討論系番組からバラエティー、報道番組、お笑い、アートやファッションまで何でもやってみます。有名から無名まで、ゴールデンから誰も見ていない深夜まで幅広くやるのが好きです。旅するのもいろんな場所に行くのが楽しいのと一緒ですね。

 実は、研究者としても同じ性格なんです。私は経済学者といえば経済学者なんですが、経済学だけでなく統計学、機械学習・人工知能やコンピューターサイエンス、応用数学、オペレーションズリサーチ、経営学といった分野の学術誌や学会に論文を出しています。

 好き勝手に色んな分野に拡散していくと、当然同業のプロからは評価されにくいです。ただ、同じようなことをやっている競合もいなくなるので、人目につかない山奥で自給自足生活をしているような満足感も出てきます。

 講演や対話でも、このあいだは横浜アリーナで1万5000人くらいの聴衆相手に講演したのですが、その次は奄美大島の横にある小島の公民館で10人くらいの住民の方と話すという謎の会をやりました。数日前は、奈良の興福寺の国宝館に朝7時前から繰り出して仏像と対話しました。仕事のお誘いはほとんどお断りするしかないのですが、受けるものは種類や規模の振り幅を保って、特定のものを選ばないようにすることを大切にしています。

 “謎仕事”を受けると、トラブルに巻き込まれることもあります。が、元々ひとつひとつの仕事に期待していないので、ある意味で予想どおりで、社会や人間のダメさを感じながら帰路につきます。清濁あわせ呑み、失敗や後悔ばかりのフィールドワークが仕事という気がしています。

 仕事の種類もそうですが、仕事を一緒にする人も分散するようにしています。同じ人と何度も話したり、特定業界の決まった人たちだけとつるむことはしません。