文春オンライン

2024年の論点

「世の男性の皆さんは言うてますか」夫との「別居婚」を選んだ上沼恵美子が思う、夫婦に必要な“たった5文字の言葉”

「世の男性の皆さんは言うてますか」夫との「別居婚」を選んだ上沼恵美子が思う、夫婦に必要な“たった5文字の言葉”

2024/01/06

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 芸能, ライフスタイル

note

部下に物言うように妻に言う

 ところが結婚生活も長くなってくると、それをひっくり返されてしまうわけです。「いやー、この人、家のこと何もできへんわ」って。主人に限った話ではないと思いますが、会社である程度まで出世して定年を迎えた男の人というのは、会社での空気をそのまま家庭に持ち込んじゃうんですね。だから部下に物言うように妻に言う。それでいてご飯の炊き方も知らず、風呂掃除もしない、電球の交換もできない。

 昔は私も、誰かが「家事のできる男の人がいい」なんて言うのを聞いて「アホちゃうか」と思ってました。「男は家の外で稼いで来たらええの」って。でも前言撤回ですね。家のことをちゃんと手伝える人やないとあきませんわ。

 突き詰めると、これ「やさしさ」の問題やと思うんです。優しいから、「高いところ危ないやろ。オレが替えたるわ」って電球も替えてくれる、荷物ももってくれるわけです。

ADVERTISEMENT

1人で生きていこうと思った瞬間

 それで思い出したんが、以前、主人と2人で「天橋立」に行ったんですよ。あそこに展望台まで運んでくれる1人乗りの長いリフトがあって、夫が前に乗って、私がひとつ後ろに乗ったんですね。10分ぐらいで着いて、いざ降りようとしたら、イスの窪みにはまって、よう降りられないんです。

「ああ~」ってもがいていたら係員のお兄さんが抱きかかえて降ろしてくれて。「すみません。ありがとうございます。下までもう1周するところでした」「いえいえ」というやりとりがあって、「ねえ」って後ろ振り返ったら、主人はおりません。

 自分だけスタスタ歩いていって、もうその背中がちっちゃいんです。ワーッと追いかけて、「私リフト降りられへんかってん。えらいことやったで!」と言っても、汚いものをみるような目つきで見るばかり……。

 このとき思いましたね。「あ、この人は助けてくれないんだ、もう私は1人で生きていこう」って。

©文藝春秋

「この辺で人生別々にしませんか」

 これはいろんなところで話したのでご存じの方もいるかもしれませんが6年前、イタリアのフィレンツェに2人で旅行にいったときに私の方から離婚を切り出したんです。いいレストランで食事してワイン飲んで、主人もご機嫌なタイミングで静かに「この辺で人生別々にしませんか」と。

 怒りましたね~。テーブルをバーン叩いて、スッと店を出ていきました。ホテルに戻っても彼がダブルベッドの真ん中に寝るもんやから、その後、私はずーっと床で寝ました。

 ただ日本に戻ってからよくよく考えてみると、離婚って財産分与とかものすごく面倒くさいんですよ。それに私の場合、ほぼ一方的に財産取られるだけですしね(笑)。それで「別居婚」という形に落ち着きました。