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もし、伝説の阪急ブレーブス応援団長が楽天を応援したら

文春野球コラム ペナントレース2018 テーマ「応援」

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 4月某日、大阪は九条にある立ち呑み屋さんでのこと。そこには白髪を綺麗に整え、牛乳をグビグビと飲む男がいた。ぷっくりとした涙袋にはこれまで流さずに飲み込んできた漢の物語がつまっているかのようだ。

阪急ブレーブス応援団長の今坂喜好さん ©かみじょうたけし

 そう、この方こそ昭和のパ・リーグを盛り上げた阪急ブレーブス応援団長・今坂喜好氏である。もう13年くらいになるだろうか、偶然ミナミの立ち呑み屋で知り合って以来、飲みに誘っていただいたり、お笑いライブを観に来ていただいたり、自分の結婚式にまで出席してくれたりと、お世話になりっぱなしの方。今回『応援』がテーマと聞き、この方に改めてお話を伺いたく思い、団長馴染みの立ち呑み屋で待ち合わせをしたのだ。仕事終わりに急いで駆けつけると一足先に宴は始まっていた。

「おーい、門田、豚まんやぁ、こーい」

団長「お疲れさん! 何飲む?」

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僕「ほなビールで」

団長「ビールとどて焼きだしたってー」

 子供の頃、大阪球場で阪急の選手が打ったホームランボールを偶然にも取り、試合後にサインをもらったのがきっかけで阪急ファンになり、それから西宮球場や大阪球場に通いつめて大声で応援していたという。

 中学を卒業後、どうしても球場、チームの近くがいいと阪急に入社し応援を続ける姿に周りのファンの大人達が立ち上がり、担ぎ上げられるように若干20歳で応援団長になった。その名も「八二会(やじかい)」。応援といっても現在のようなラッパなんかない、笛で軽快に仕切り、ここぞの場面でヤジをいれるのだ。

「悔しかったら阪急沿線住んでみー」

「べべたぁー、べべた、べべた、べべたぁー」

「あーあ、あーあ、あーあ、さぁ皆さんご一緒に! あーあ、あーあ」

 沢山あるが、個人的には大阪球場で南海の門田博光選手に放った「おーい、門田、豚まんやぁ、こーい。一緒に食べよぉー」。これは何度聞いても笑えるし、秀逸である。

 えっ、知らない? 「門田 豚まん」ですぐ検索お願いいたします! しかも門田選手も裏から持って来てとジェスチャーで答える。今では考えられないが、古き良きパ・リーグの風景を物語っている。

団長「昔の話はええから、かみじょうも同じのん飲むか?」

僕「いや、牛乳はいいですわっ」

団長「ちゃうちゃう、カウボーイ言うねん」

 どうやら、団長がさっきからグビグビやっていたのはウイスキーを牛乳で割ったものだった。なら僕もという事でカウボーイでもう一度乾杯、その勢いで団長にお願いした。

僕「今ちょうど楽天vsロッテやってるんですが、それ観ながら団長がもし楽天ファンならどんなヤジいれるかみてみたいです」

団長「かまへんよっ」

 すぐさまRakutenTVをつけた。

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