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「コラボしませんか?」スマホゲーム『Fate/Grand Order』グッズが国立博物館で発売延期になった“ウラ事情”

「コラボしませんか?」スマホゲーム『Fate/Grand Order』グッズが国立博物館で発売延期になった“ウラ事情”

2023/12/20

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : エンタメ, 娯楽

note

『FGO』にハマってインド文明を専攻した人も

――今回のコラボで、テスカトリポカなどの古代メキシコの神々を知り、実際の神話に触れた方も多いと思います。

奈須 サーヴァントで初めてその人物の存在を知って、そこからものすごく真剣に調べてくれるユーザーが多いんです。インド神話が原典のサーヴァントを好きになったユーザーが、インドにハマり、それが高じて大学でインド文明専攻に進んだという人もいたぐらい。おいおい、いまや僕たちより詳しいぞ、みたいな。

 もともと『FGO』を始めた理由の一つが、学校で世界史を習うときに、ただただ暗記をするだけという勉強法に不満があったからです。せっかく覚えても、卒業してしまえば史学科に入らない限りは他人事になってしまうでしょう。それなら、ゲームという娯楽を通して、自分が主人公になって、色々な人類史のターニングポイントや大きな発明、事件に触れることで、勉強した世界史を楽しく学び直すことができるのは、ゲームの有り様としてすごく良いなと思ったんです。口はばったいようですが、マジメなことを言えば、過去の歴史の積み重ねがあるからこそ、現在の自分たちがいるということを伝えたい。そんな思いもありました。だからこそ、人類の歴史をテーマにしたゲームをつくろうと考えたんです。 

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古典の英雄や神々をサーヴァントとして召喚し、敵と戦う ⒸTYPE-MOON/FGO PROJECT

――世界中の歴史、神話、物語を原典とした個性的なサーヴァントがFGOの魅力ですが、原典があるからこそ、キャラ設定の難しさもあるのでは?

奈須 もとの逸話、伝承、物語に必ず敬意を払って、それを活かす。どんなに有名な英雄でも、どんなにマイナーな英雄でも、みんな等しく扱おうというのが、Fateシリーズを制作するにあたって一番はじめに作った制作チームの中での約束でした。

 人物の評価だって、一般的には「悪人」「悪役」とされている人物でも、政治に関してはとてもフェアだったとか、他国では人気だった、とかいうことがあるでしょう? 近年では研究が進んで、その人物の評価も多面的になっているんです。例えば、皇帝ネロは「暴君」のイメージが強いですが、税制改革や都市計画を推進した側面もあり、民衆の人気は高かった。ゲーム上のネロは自信家でワガママなキャラではありますが、暴政を敷くだけの悪人としては描いていません。そういう多面的な情報を取り込んで、現代の人々に理解される、愛される英雄像を語っていきたいんです。

ネロ・クラウディウス ⒸTYPE-MOON/FGO PROJECT