2015年に配信開始され、10月30日にはGoogle Playのセールスランキングで首位に立つなど、リリースから9年目にしていまだ根強い人気を誇るスマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』(フェイト/グランドオーダー、以下『FGO』)。2004年に発売したコンピューターゲーム『Fate/stay night』から始まったFateシリーズの一つであり、今年6月には国内累計ダウンロード数が2900万を突破するなど、現在も根強い人気を誇っている。Fateシリーズの生みの親であり、『FGO』でも全体統括、全シナリオの監修、サーヴァントの設定管理を行う奈須きのこ氏に話を聞いた。

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国立博物館とのコラボレーション

――『FGO』がリリースされて9年。いまだに人気は続いており、ユーザーの裾野が広がった感もあります。最近では東京国立博物館で開催した特別展「古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン」とのコラボレーションでも『FGO』を目にする機会がありました。コラボグッズの反響が大きすぎて、発売を延期するほどだったそうですね。

奈須 ありがとうございます。今年1月にリリースした『FGO』第2部7章は、マヤ、アステカ文明をテーマにしたストーリーでした。ククルカン、テスカトリポカ、トラロックなどの古代メキシコの神々を原典としたサーヴァントが活躍するわけですが、そのご縁で、「コラボしませんか?」とお声がけいただいたんです。

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『FGO』の醍醐味のひとつは、登場するキャラクターにある。『アーサー王伝説』のアーサー王から、ギリシャ神話の女神アルテミス、ジャンヌ・ダルク、沖田総司、諸葛孔明まで、歴史上の偉人や古典の英雄や神々が「サーヴァント」となって登場。プレイヤーは聖杯の魔力によって現世に召喚された複数の英霊をサーヴァントとして使役するマスターとなり、異変の起きた人類史を守るのだ。

奈須 『FGO』は2015~16年までに第1部が配信、2017年からは第2部が配信開始されていて、第1部は人類史の振り返りですが、第2部では歴史のターニングポイントで異変が起きて、そのまま違った歴史を辿っていくと、こんな世界になっていたかもしれない……という「Ifの物語」。なので、実際の歴史に基づいた「古代メキシコ展」にコラボしたいと言われたときは、ちょっと畏れ多いなと思いました。

 また、テスカトリポカとケツァル・コアトルは、アステカ神話においてしばしばライバル同士とも言われた神々なので、『FGO』のサーヴァントとしてのテスカトリポカ、ケツァル・コアトルも悪口を言い合う犬猿の仲という設定になっています。国立の博物館が開催する展覧会に、そういったゲーム的要素がどう受け入れられているのか心配ではありました。

テスカトリポカ(左)と、ケツァル・コアトル ⒸTYPE-MOON/FGO PROJECT

 そんな心境ではありましたが、ユーザーもコラボを契機に古代メキシコに興味を持って、展覧会に足を運んでくださったようです。「楽しかった」というツイートも目にしました。少しでもアステカ文明に貢献ができたようで、嬉しいです。甲斐があったなと。