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安田 峰俊
2018/04/02

中国の爆笑B級ニュースが減ってきた理由が笑えない

かつての壮大なスケール感のバカバカしさはなぜ失われたのか

 私見だが、現代の日本における中国情報の消費には複数のパターンがあると考えている。まずは中国の政治・経済への真面目な関心で、これは19世紀から続くかなり伝統的な切り口だ。また、漢詩や中国史への関心も、近年は存在感が薄れてきたが古くから脈々と続いている。

 いっぽう、もうひとつ大きなトピックがB級ニュースだろう。有名どころでは段ボール肉まんや「チャイナボカン」シリーズ、比較的マニアックなところでは、ゼロ年代のネット黎明期に人気が爆発した中国製ロボット「先行者」、北京五輪時のパクリ・パンフレットの「涼宮ハルビン(通称)」、遊園地のニセキャラクター……といったユルめの笑える話題である。

10年間中国のB級ニュースを探し続けてきた筆者が感じた異変

 私はライターになる以前の2008年から中国のネット掲示板の翻訳ブログを運営して彼の国のトホホな話題を探し続け、最近でも大連の上場ダッチワイフメーカーだの深センのネトゲ廃人村だの怪しいものばかり取材している。学生時代までさかのぼるなら、トホホな中国との付き合いは15年以上におよぶ。政治や経済のギラギラした話題から距離を置き、泥臭くてリアルな中国社会が垣間見えるのがB級ニュースの醍醐味だ。

2008年の北京五輪前に中国で登場したパンフレット。日本のライトノベルの登場キャラクターを実に残念な感じでパクっており、大いに話題になった

 ところが、近年はなぜか中国のB級ニュースがとんとつまらなくなった。過去と比べて無邪気に笑える話が減ったのである。過去にこの手の話の配信が多かったサーチナやレコードチャイナなどのウェブニュースの配信もかなり減少している。

 私は今年の4月14日、自分と同じく中国B級ニュースに詳しいジャーナリストの高口康太、アジアITライターの山谷剛史氏らと「中国B級ニュースはなぜ死んだのか?」というトークイベントを予定している。今回の記事ではこれに先立って、中国のトホホな話の報道が減ってしまった理由を自分なりに考察してみることにしたい。

1.中国の出来事は同じことの繰り返し

 まずは以下に、日本でよく報じられがちな中国のおもしろニュースの例を挙げてみよう。

・パクリのミッキーやドラえもんが登場

・自動車や携帯電話や店舗が爆発

・ニセ銀行やニセ公的機関が出現

・農民が謎の発明

・公害で川がカラフルに変化

・事故で横転したトラックの荷台に地元住民が群がり略奪

 いずれも非常に楽しげな話だが、実はこれらは中国の報道を定点観測していると、数年に一度くらい似たような話が出てくる。中国の人口は日本の10倍なので、似たような行動をする人も10倍多くいるわけであり、結果的に構図が酷似した事件が定期的にリピートされるのだ。

 当然ながら、過去の事件と似た話は新鮮味に欠けてニュースバリューが下がるため、日本では報じられにくくなる。加えて近年の場合は、ゼロ年代までは派手に起きていた事件が、縮小再生産を繰り返すだけになった例も多く見られる。

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