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「自分の体は汚い」「湯船に入れない」父親からの性虐待を告発 塚原たえさんが生番組で明かした“壊れたままの心”

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース, 社会, オピニオン, ウェビナー

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幼少期のたえさんと和寛さん

 秋山 二人とも、まったく楽しそうな笑顔がない。たまたまでしょうか。あるいは、普段からこういう感じだったんでしょうか。

 塚原 普段からだったと思います。その頃の記憶は確かじゃないんです。この少し後、3歳ぐらいのときに住んでいた家のことは覚えています。

 その頃には弟と私を家に置いて、父親と母親が出かけてしまったことがありました。弟と私は、家にあるお鍋の中身を食べてしのいだわけですが、帰ってきた父親に怒られた記憶が残っています。

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 秋山 性的虐待が始まる前から、ネグレクトや身体的虐待が始まっていたわけですね。

 塚原 そうです。一番記憶に残っているのは、真っ暗なトイレに閉じ込められて、1時間、2時間……時間的なことはよく覚えてないんですが、私の記憶ではすごく長い時間、閉じ込められていた。

 秋山 父親から愛情をかけてもらえない日常がずっとあったということですね。

 塚原 はい。でも、やっぱり甘い言葉をかけられると、愛情を感じてしまうことがありました。

 秋山 まさにグルーミング。

秋山さん ©文藝春秋

 塚原 グルーミングですね。言うのも気持ち悪いんですが、本当に猫なで声で「たえちゃん」って呼ぶんですよ。そのときの会話って本当に覚えていなくて。父親にされたことしか覚えられないんですよね。

 例えば、中学生のときのことです。父親がキッチンのほうでお酒を飲んでいて、そこで膝に乗せられて、ディープキスをされたりだとか。気持ち悪くて、臭くて……そういう記憶が異常に残っています。

 それから、同じような時期に髪の毛をつかんで引きずり回されました。血が出るほど髪の毛を抜かれて、敷居で頭を打ったところで気を失っていたんですよね。

 秋山 暴力と優しさの落差がすごくあるわけですね。

 塚原 はい。だから、なおさら甘い声をかけられたとか、優しくされたとか、頭をなでられたとか、そういうときになると父親の機嫌がいいので「こうしていれば何もされない」と思ってしまうんですよね。

性加害者が3歳児を狙う理由

 斉藤 「3歳」という年齢が塚原さんのお話にも出てきました。これは性加害者の「認知の歪み」に関連しています。

 ターゲットにされる児童の年齢は、私の経験では最低でも3歳なんですね。実際、3歳をターゲットにしていた加害者2人の治療を担当したことがあります。その2人ともが、同じようなことを言うんですね。「3歳だったら加害の記憶が残らないだろう。自分たちは欲求を充足できるから、これはWin-Winじゃないか」と。

 しかし、この認識は全くの誤りです。さっき塚原さんがおっしゃったように、トラウマは身体感覚として記憶に残ります。

 なお、加害行為にはグルーミングの意味合いもあります。3歳の子どもは、加害者側の性的な価値観を植え付けやすいんですね。

「これは当たり前の行為だ」「2人だけの秘密」「いつか経験するんだから僕が教えてあげる」とか……恐ろしいほどに、どの加害者も同じ構文を使います。これを「加害者構文」と私は名付けました。

 秋山 記事にも出てきましたが、塚原さんも父親から「これは性教育だ」みたいな言い方をされて性被害に遭っているわけですね。

子ども時代の塚原さん(左)と父親

 塚原 そうです。「性教育だ」と最初に言われたのが9歳のときでした。部屋で下着を取られたうえに、足を広げられました。それから、「見せろ」と言われ……。

 たまたま、母親が部屋に入ってきて「なにしているの?」って訊いたのですが、「性教育だ。学校で教わる前に俺が教えてやるんだ」と父親が言っていたんです。

 当時、私の通っていた小学校では高学年になると性教育の授業が行われていたので、母親も納得していました……まあ、本心はわからないんですが。

 それからしばらく後、小学3年生の時に、指や鉛筆を膣に入れるといった行為を父親がやり始めました。一緒にお風呂に入ることを強制されていて、そこで指を入れてくるんですね。出てもいない胸を触ってきたり。そして、初潮が来た日にレイプされました。