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池上彰氏「言論の自由がない国ほど、面白い政治風刺が生まれる」

池上彰×福田裕昭(テレビ東京プロデューサー) #2

「もりにしますか? かけにしますか?」

福田 日本でも、森友学園と加計学園の問題が噴出した時に小話が出てきましたね。

池上 安倍総理が蕎麦屋に行ったら、蕎麦屋が「もりにしますか? かけにしますか?」と言ったという小話ですね。これを聞いた時に、私が勝手にもう一つ付け加えた話があります。「もりにしますか? かけにしますか?」「うん、本当はざるがいいな」。

福田 取材・報道はざるのようにしておいてほしいという意味ですね。

池上 いま、日本の言論の自由、報道の自由という点では「いかがなものか」という空気感は確かにあるといえるのではないでしょうか。安倍政権というのは、何となく気軽に批判できないような雰囲気がある。だからこそ、こういう小話が出てくるのかなと思います。

安倍晋三総理 ©getty

 言論の自由が妨げられていると、なんとか裏をかいて風刺しようという傾向は盛んになりますね。より面白い政治風刺が出てきます。ですからソ連の崩壊後、ロシアになって言論の自由を獲得したとき、アネクドートの出来が悪くなったんです。言論の自由度が高まったのだから、わざわざアネクドートとして表現する必要がなくなってしまった。

福田 そう考えると、さっき言った「言論の自由度ランキング」で上位につけている北欧の国々には、こういった風刺は必要ないのかもしれません。

池上 ユニークな政治小話はあまりないんじゃないかと思います。平昌オリンピックが終わって、次の冬季オリンピックは北京ですね。もし羽生結弦選手がフィギュアスケートに出場した場合、演技終了後にプーさんの人形がポーンと投げ込まれたら、中国での放送はどうなるんだろうっていうのが、いま日本の国内での小話です(笑)。

平昌オリンピックで羽生結弦選手のフリー演技終了後、リンクに投げ込まれた「プーさん」 ©getty

福田 面白いですね(笑)。風刺というのは、言論の自由が限られた環境で、政治的な出来事を草の根的なやり方で伝えたい。そういう状況で秀逸なものができるんでしょうか。

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