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「嘘をついてしまっていることがある…」BiSHのファンだった小説家・住野よるが明かす、推し“モモコグミカンパニー“への本音

住野よるさんは「解散ノート」をどう読んだか

2024/02/23
note

「BiSHではなくなった後もあなたが幸せでありますように」

 わたくしごとですがこの場を借りて白状させてください。ついさっきモモコさんには嘘をつきたくないと書いたばかりで恐縮なのですが、そういえば一つモモコさんに結果的な嘘をついてしまっていることがあります。

 解散前、モモコさんに初めてファンレターを送りました。タイミングとしては、東京スカパラダイスオーケストラとBiSHの対バンを見に行った直後でした。手紙にはその時点での本当のことだけ書きました。自分にとって最後のBiSHのライブだったこと、Nothing.が入ったセトリにもモモコさんがサックスを構える姿にも感無量だったことなどを綴りました。しかし、その後にもう一度だけライブを見に行っています。手紙で書いたことのうち一つが嘘になってしまったかもしれませんが、どちらのライブも行けて本当によかったと思っています。

 最後に見に行ったライブは東京ドームではありません。ある土地で行われたワンマンライブです。そのライブ中、僕は清掃員の皆さんと共に客席で時間を過ごし、解散直前に心の中で高まっていく悲しみが薄らぎました。みんなが「今まで本当に楽しかったよありがとう」を伝えに来ているんだなと強く感じたからです。僕は同じものを好きな人がみんな仲間だなんて、生きて来て一度も思ったことはありません。でもHiDE the BLUEでモモコさんが「ありのままでいいのかな?」と問いかけた瞬間に叫ばれる「いいよ」には、その場にいる全員の、「BiSHではなくなった後もあなたが幸せでありますように」が詰まっていたと信じています。

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 モモコさん、BiSHメンバーの皆さんスタッフの皆さん、そしてこれを読んでくださったり、ひょっとすればどこかのBiSHのライブで一緒に感動したり、三歩を知ってくださっている清掃員の皆さん、BiSHに出会ってからの今まで本当に楽しかったです、心からありがとうございました。

写真=鈴木七絵/文藝春秋

解散ノート

解散ノート

モモコグミカンパニー

文藝春秋

2024年2月14日 発売

「嘘をついてしまっていることがある…」BiSHのファンだった小説家・住野よるが明かす、推し“モモコグミカンパニー“への本音

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