役者として目覚めた瞬間、当時としては常識破りだった結婚など、「女優・岩下志麻」の軌跡が次第に明らかに。トークイベント初体験の岩下さんと春日太一さんの対談の続編。

女優生活60年、トークイベントは初めてです 岩下志麻×春日太一#1の続きです

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岩下さんとのラブシーンは濃厚?

春日 東映のスタッフのかたたちに聞くと、とにかく現場での岩下さんの評判がいいんです。変な言いかたですけど、女優さんというのは、大変な人はいろいろと大変だったりというのがあったりするんですけど、岩下さんは、現場を非常によく理解されている、と。例えば、照明はセッティングにすごく時間がかかるので、たいてい助監督だったりを代役にたてて準備しますが、岩下さんの場合はご自身がずっとテストのために立っている。そういう女優さんはほかにはなかなかいません。

春日太一さん ©志水隆/文藝春秋

岩下 そうですか。他のかたに同じライティングで立っていただいても、私とは顔かたちが違うと思うので……。もちろん、背丈は同じくらいのかたが立ってくださるんですけど、やはりそこは微妙に違ってくるのでテストの段階から自分で立たせていただいています。

春日 映画の場合、照明待ちで1時間、2時間というのもざらですけど……。

岩下 ずっと立ってますね。

春日 すごいですね……。そういうことってなかなかないんですよ。スタッフの側からするとこんなにありがたい方はいない。それだけにスタッフも燃えてくると聞いたことがあります。それから仲代達矢さんや加藤剛さんなど共演者のかたにお話うかがったり丹波哲郎さんとかの昔のインタビューを読んだりすると、みなさん共通しているのは、岩下さんとラブシーンを演じるときはかなり濃厚だ、という話が出てきます。加藤剛さんも『影の車』(1970)のときは息切れして大変だったとか、『雲霧仁左衛門』(1978)を撮影する前の丹波哲郎さんのインタビューを読んだら、「今度の相手役は岩下さんだからかなり体力をつけていこうと思う」とか。

岩下 やだあ(笑)。

岩下志麻さん 春日太一さん ©志水隆/文藝春秋