昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

大山 くまお
2018/04/07

テレビ制圧! 放送法改正を本気で目指す安倍政権の暴言を総ざらいする

蜜月関係の終焉? 読売ナベツネも「全面対決だ」

 政府がテレビ、ラジオ番組の「政治的公平」や「正確な報道」を定めた放送法4条の撤廃を検討している。一連の問題にまつわる言葉を振り返ってみたい。

◆◆◆

安倍晋三 首相
「インターネットテレビは放送法の規制はかからないが、見ている人には地上波などと全く同じだ。日本の法体系が追いついていない状況で、電波での大きな改革が必要だ」

毎日新聞 2月1日

 安倍首相は今年1月31日に行われたIT企業中心の経済団体「新経済連盟」の新年会でこのように語っている。翌日の2月1日、首相官邸で開かれた「未来投資会議」(議長・首相)の会合では、電波の有効利用をめぐり「放送事業の在り方の大胆な見直しが必要だ」と述べている。電波制度改革への首相の強い決意の表れだ。

安倍晋三首相 ©文藝春秋

『週刊文春』は首相官邸が作成した二通の内部文書を入手したと報じている。「放送事業の大胆な見直しに向けた改革方針」と題された文書には「放送にのみ課されている規制(放送法第4条等)の撤廃」が赤字で明記されていたという。さらに、ネット事業者などがテレビ局の放送設備を利用し、コンテンツを流せるようにすべきと主張。もう一通の文書では、「H31通常国会orH30臨時国会法案提出」と具体的なスケジュールも打ち出されていた。

 政府が撤廃しようとしている放送法4条は、大きく次の4点を放送局に求めている。(1)公序良俗を害しない(2)政治的公平さを失わない(3)事実をまげない(4)意見が対立する問題は多角的に論点を明確にする。これが撤廃されれば、フェイクニュースが事実のように報じられたり、選挙報道の中立性が損なわれる事態になりかねない。政党が都合のいい番組を放送することも可能になる。

 時事通信は「政権寄りのメディアを誕生させる狙いがあるのではないか」という中央省庁幹部の声を紹介(時事ドットコムニュース 4月4日)。経済ジャーナリストの町田徹氏は「安倍政権はテレビ局をけん制するだけでなく、共和党べったりの米テレビ局『FOXニュース』の自民党版を作る野望を持ち始めたのではないか」という見方を紹介している(現代ビジネス 4月3日)。

今井尚哉 首相秘書官
「テレビに政治的中立なんてないだろ」

『週刊文春』4月12日号

安倍首相と今井尚哉首相秘書官(左) ©共同通信社

 放送法改正を主導していると見られているのが、安倍首相の信頼が厚い今井秘書官だ。4月6日付の毎日新聞は官邸関係者の「今でもテレビの政治的中立なんてあってないようなもの。米国みたいに視聴者が『このテレビ局はこの政党を支持している』と分かったほうがいい」という言葉を紹介している。テレビ局に「公正」さなど求めない、というわけだ。

安倍晋三 首相
「(批判的な)TBSやテレ朝は報道じゃない」

『週刊文春』4月12日号

 背景にあるのは、森友学園問題などについての報道に対する政府、ならびに安倍首相の不満だ。内閣支持率の低下、ならびに首相自身への不信感は報道のせいだと考えているふしがある。2014年11月、安倍首相がTBS『NEWS23』に出演した際、政府の経済政策について懐疑的な回答が続く街頭インタビューの映像が流れた後、「おかしいじゃないか!」と声を張り上げて不満を露わにしたのはよく知られている。このときは当時の萩生田光一筆頭副幹事長と福井照報道局長が在京6局に対し、選挙報道の「公平中立」を求める文書を送っている。

 2015年11月には百田尚樹氏が代表理事、上念司氏が事務局長、ケント・ギルバート氏、田中秀臣氏らが理事を務める「放送法遵守を求める視聴者の会」が発足(役職は現在のもの)。

『NEWS23』を批判する意見広告を出したり、高市早苗総務相(当時)に放送法4条の政治的公平性についての公開質問状を出したりするなどの活動を行った。なお、ケント・ギルバート氏は2017年7月、産経ニュースの自身の連載で「安倍首相もそろそろ本気でメディアへの対抗策を打ち出したらどうか」「『政治的公平性』などを求めた放送法4条は、撤廃しても構わない」などと記している。遵守なのか、撤廃なのかどっちだよ。

この記事の画像