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スタローン、シュワルツェネッガーの“2大巨頭”からトム、ブラピを経て“スリム”なティモシー・シャラメへ 「筋肉」と「ヒーロー」のハリウッド史

2024/03/20

source : 週刊文春CINEMA オンライン オリジナル

genre : エンタメ, 映画

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 筋肉とも無縁そうなウィリスだが、それでも役作りのために上半身と下半身を別々にエクササイズする特殊なトレーニングを取り入れることで筋肉のバランスを取ったという記録が残されている。でも、『ダイ・ハード』の劇中、割れたガラスの破片が足の裏に刺さって“いててて”と顔をしかめるような、誰もが想像できる肉の痛みを伝えるのが“ブルース・ウィリス・アクション”の真髄。『ラスト・ボーイスカウト』(1991)のPRで来日した際、インタビューでそのことに触れたら、「そう言われるのが一番嬉しい」と真面目に答えていた。まさにそこが活劇俳優としての彼のこだわりだったのだ。

洞窟探検も…トム・クルーズのトレーニングが凄すぎる

 マッチョ神話を受け継ぐキーパーソンが、ハリウッド最後のスターと言われるトム・クルーズだ。最新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE』(2023)で還暦を迎えたクルーズだが、肉体年齢はその約半分だと言われる。何しろ、彼が今も続けているトレーニング・プログラムが凄すぎる。ざっと紹介しよう。筋トレ、ジョギングは当たり前で、有酸素運動としてシーカヤック、フェンシング、ロッククライミングに加え、素人には目的が不明だが、ハイキングと洞窟探検にもトライしているのだとか。それだけで一編のドキュメンタリー映画が作れそうではないか。

昨年『ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE』の会見に登場したトム・クルーズ ©Penta Press/時事通信フォト

 一つ言えるのは、日々のトレーニングが出演作の見せ場でもある、筋力を推進力に換えて体をぐいぐい前進させていくスタントなしの全力疾走シーンに生かされていること。走るクルーズはどんなスタントシーンよりも見応えがある。猛スピードで走れる限り、ハリウッド最後のスターの地位は安泰だ。

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顔幅と同じ太さに首を育てたブラピ

 クルーズとは同世代のライバル、ブラッド・ピットの場合は、役柄によって体型を変化させられるタイプ。『ファイト・クラブ』(1999)で地下の拳闘場を仕切る謎の青年、タイラーを演じるにあたり、ピットはボクシング、テコンドー、グラップリング(格闘技の一種)に挑戦し、美しく、見方によっては痛々しいほどのボディラインを手に入れる。役のために前歯を削り、撮了後、元に戻したりしたのは、ひとえに、デヴィッド・フィンチャー監督への献身から。

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