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リニューアルされた「走る美術館」現美新幹線で高尚な気分に浸ってみる

リニューアルされた「走る美術館」現美新幹線で高尚な気分に浸ってみる

アートな土曜日

2018/04/07
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自然と呼応するAKI INOMATAの作品

 14号車は、新たに写真家・石川直樹の作品《K2》で彩られることとなった。エベレストをはじめ七大陸最高峰登頂を達成している石川が、世界第2位の高峰K2で撮影した作品群を展示している。快適な新幹線の車内で、岩と雪に覆われた厳しい自然界の姿をじっくり眺めるのは不思議な体験だ。

14号車に展示された石川直樹《K2》

 16号車ではAKI INOMATAによる映像作品が、5面のモニターに映し出されていく。4つの作品がオムニバス形式で登場するかたちだ。

 そのうちのひとつ《やどかりに「やど」をわたしてみる》は、世界各地の建築物を3Dプリンタでかたどり、ヤドカリの殻のサイズに仕立てる。それを生きたヤドカリと出逢わせて、彼らが気に入れば通常の殻から引越をしてもらい、その様子を記録するというもの。生きものとコラボレーションするスタイルで作品づくりをしてきた彼女の代表作となる。

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16号車で映し出されるAKI INOMATAの映像作品

 車両リニューアルのお披露目に参加していたAKI INOMATAさんに話を聞けた。

「移動しながらアートに触れる機会なんてまずありません。他では味わえない体験ができる場ですよね。豊かな自然のなかを走る上越新幹線の車両内で作品を観てもらえるのは、生物と人間の関係をテーマにしてきた私にとってたいへんうれしいこと。すてきな縁を感じます」

 とのこと。なるほどたしかに、ソファ席にゆったり座って車窓と映像作品を交互に眺めていると、目に映るものすべてが美しく溶け合って心地いい。この時間が永遠に続けばいいのに。そんな気持ちにさせられる。

作品への思いを語るAKI INOMATAさん

「乗りもので過ごす時間って、もの想いに耽るのにぴったりです。アートも目を喜ばせるだけでなく、それを観ながらあれこれ考えるところに楽しさがあります。現美新幹線に乗ってアートに触れながら、いろんなことを想起していただけたら」

 区間の走行時間は1時間に満たないけれど、それはきっと何にも代え難い、忘れられぬひとときになる。

 

黒い新幹線を知っていますか? 自由席料金で楽しむアートとカフェの非日常空間」と併せてお読みください。

リニューアルされた「走る美術館」現美新幹線で高尚な気分に浸ってみる

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