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小野 展克
2018/04/16

現場報告 銀行員がどんどん辞めている

「人員・店舗・預金」の3つの過剰が銀行の足枷に

二つの方向から挟み撃ちに

 しかし、これだけ大規模な人員削減でもまだ不十分だという。別のメガバンク幹部はこう話す。

「住宅ローンや決済手数料など従来型の個人取引で収益を伸ばす余地は、ほとんどありません。人員は、まだまだだぶついています」

 整理すれば、従来の銀行ビジネスは、二つの方向から挟み撃ちにされている。

 一つは、間接金融という仕組みそのものの限界だ。これは銀行だけではなく、これと表裏一体である個人や企業のあり方とも関わる問題である。つまり、バブル崩壊以降に顕著になった、リスクを回避して銀行に全資産を預金したがる個人のあり方、技術力などを持ちながら成長への意気込みを欠いた企業のあり方とも密接に絡み合っている。

 もう一つは、金融業務のデジタル化による革新、フィンテックがもたらす影響だ。とくに仮想通貨を生み出したブロックチェーンという新たな技術が、銀行のビジネスの核となる信用のあり方を根本から作り変えようとしている。

 間接金融の限界と技術革新の波という二つの要因によって銀行の将来が見えなくなっているのだ。

貸出先がない膨大な銀行預金

「このままでは銀行はスマートフォンのアプリの一つになりますよ」

 こう指摘するのは、三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長で、コンサルティング会社PwCインターナショナルのシニア・グローバル・アドバイザーである田中正明氏だ。

「巨額の資金が、ほとんどリターンもないまま銀行に眠っています。預金を集めて融資するデット・チェーン(負債の連鎖)を断ち切り、預金を投資商品にシフトさせ、企業に株式などの形でリスクマネーを供給するインベストメント・チェーン(投資の連鎖)の仕組みに切り替えないと日本の金融に未来はありません。資本市場の厚みがないことが日本の成長を鈍化させています。メガバンクや地銀といった従来型の単純商業銀行モデルは、もはや陳腐化してしまいました」

 日銀の金融システムレポートによると、2012年12月から2017年8月の約5年で、銀行に持ち込まれた預金や譲渡性預金(NCD)は131兆円も増え、日銀当座預金を中心とする現金・預け金は191兆円も積み上がった。つまり預金はこれだけ膨大に積み上がっているのに、銀行はこうした資金をほとんど有効活用できていないのだ。

 個人は、余剰資金をほとんど金利が付かない銀行に預金している。融資先を見つけられない銀行は、集まり過ぎた預金に手を焼き、だぶついた資金を銀行同士でやり取りするためだけの日銀の口座で眠らせている。

膨大な資金が眠る日銀 ©iStock.com

 銀行としては、元本保証で集めた資金はリスクにはさらすことはできないから、有望なビジネスでも、担保を持たないベンチャーには簡単には融資できない。こうした銀行のあり方は、企業が思い切った資金調達で果敢な経営に挑まず、低収益の経営に胡坐をかいていることや個人がリスクの高い資産運用に躊躇していることと裏腹な関係にある。

 つまり、預金という元本保証の仕組みでお金を集め、企業に貸し出す間接金融の仕組みがもはや機能していないのだ。田中氏の言う「デット・チェーン」が資金の流れを滞らせ、日本経済を停滞へと導いている。

 実際に企業向け融資は、稼ぐ力を失いつつある。みずほFGの2017年第3四半期の国内大企業向けの貸出スプレッド(利ザヤ)は、わずか0.49%。1億円を融資しても、49万円しか稼げていない。他のメガバンクでもほぼ同水準だ。

「収益も資産も健全な大企業だと、利ザヤが0.07%~0.08%というケースもあります。とても商売になりません」(メガバンク幹部)

 増えすぎた預金によって銀行間の貸し出し競争が激化し、金利の値下げ圧力が強まっているのだ。メガバンクの幹部は、苦しい現状を明かす。

「情報や戦略など付加価値が提供できなければ、法人のお客様との取引は続きません。わずかな利ザヤですが、それすらコンサルタント料の対価だと考えています」

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