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小野 展克
2018/04/16

現場報告 銀行員がどんどん辞めている

「人員・店舗・預金」の3つの過剰が銀行の足枷に

ミスが許されない減点主義の企業文化

 こうしたフィンテックの波及力は、社会を根こそぎ変化させつつある。ビッグデータやAI(人工知能)を活用した資産運用への助言、株式のトレード戦術の改善、虹彩や指紋などの生体認証を活用したスマホでの決済、送金……。シリコンバレーの最先端の技術が、金融の世界に押し寄せている。

 こうしたイノベーションの創出と活用には、素早い意思決定と失敗を恐れないチャレンジ精神が必要だ。しかし間接金融の担い手であった「安定第一」の日本の銀行には、年功序列とミスが許されない減点主義の企業文化が根付いている。メガバンクの幹部の一人は言う。

「メガバンクは、成功したフィンテック企業を買収する方向に舵を切りました。ただ、フィンテックは、多くの人が使って社会のプラットフォーム(基盤)となることで一気に利益が上がるので、有力なフィンテック企業は一つの企業に囲い込まれることを嫌います。銀行はフィンテックが生み出す利益をうまく吸収できないのではと懸念しています」

 しかし、メガバンクも指をくわえて傍観しているわけではない。

フィンテックに進出するみずほFG(写真はみずほ銀行本店) ©共同通信社

 みずほFGは、昨年6月、ベンチャー投資ファンドの「ウィル(WiL)グループ」と共同でフィンテックを担う「ブルー・ラボ(Blue Lab)」を設立した。出資比率は、ウィルグループが過半数で、傘下のみずほ銀行の出資は14.9%に抑えた。その一方、代表取締役社長の山田大介氏はみずほ銀行の常務執行役員で、取締役の阿部展久氏もみずほFGのデジタルイノベーション部・部長であり、ブルー・ラボは、「みずほのデジタル部隊」でもある。阿部氏は言う。

「みずほ銀の出資比率を抑え、通常の銀行の意思決定の枠外で動けるように工夫されています。いわば『出島』です。みずほのデジタルイノベーション部のメンバーは、ブルー・ラボを兼務していますが、約半分は中途採用されたテクノロジー、ビジネス開発などの専門家です。出資企業等、外部から多くのスペシャリストを受け入れており、トップも、みずほでフィンテックを専門に担当する常務です。社長のOKが出れば、みずほでの採用如何に拘らず、素早く意思決定できる仕組みです」

 みずほは、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の3行が経営統合して設立されたグループだ。旧行同士の対立が続き、たすき掛け人事の慣行からも、なかなか脱しきれず、そのことによる意思決定の遅れが他のメガバンクに利益面で引き離される要因になったとの指摘も多い。それだけに、従来の銀行の意思決定の慣行を打ち破りデジタル時代に対応できる組織づくりを目指したのだろう。

「みずほフィナンシャルグループ」新会社名称を発表する富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行の3頭取 ©共同通信社

 またみずほは、ソフトバンクと提携して、「Jスコア」を設立し、中国の芝麻信用とよく似たサービスを開始した。顧客が自ら年収や勤続年数等を入力し、みずほやソフトバンクとの取引情報を提供することも可能で、千点満点のスコアが示される仕組みだが、「個人情報に敏感な日本で広がるか」という疑問をよそに利用者は順調に増加している。

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