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「イッペイが『大谷に入れないとボコボコにするぞ』って」アメリカ人記者が明かす、大谷翔平と水原一平が築いていた“特別な関係”

『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』より #2

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縁の下の力持ち

トモヤ サム、通訳を通さないと大谷と会話できないっていうのは、記者としてはやっぱり仕事が難しくなる?

サム 通訳を介さなければならないことに文句を言うつもりはない。大変なのは、他の国から来た選手の方だから。実際に大谷がどれくらい英語を理解しているかは分からない。でも僕たちが質問すると、大谷はいつも頷きながら聞いている。質問は理解できているんだと思う。でも、彼がやりやすいやり方で、こちらは構わないよ。人それぞれだからね。まだそんなに英語が上手ではないけど、通訳をつけないで話すことを好む選手もいる。

 一平は大変だと思う。大谷の発言は世界的に話題になるから。21年のシーズン終了時、エンゼルスに移籍してよかったかと尋ねたら、「優勝することが最優先」という答えが返ってきた。正確に意図を伝えないとまずい質問だよ。つまり、「勝てていないエンゼルスには満足していない」と受け取られかねないから。今に至るまで、その答えの意味を確信できてはいない。そういう意味では、言語は確かに障壁にはなる。

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©文藝春秋

 大谷が一平を必要としない日は来ないと思う。一平は通訳の域をはるかに超えた役割を果たしているから。親友のような存在でもあって、コーチのような存在でもあって、兄弟のような存在でもある。彼らには切っても切れない絆のようなものがあると感じる。

 記者たちだけでなく、全てのコーチやチームメイトが一平を介してコミュニケーションしなければならない。大谷の秘書のようなもの。フィル(ネビン監督)は、「一平が試合中に、『大谷は打者として出られる』と伝えに来た」とよく話していたよ。