電子データ化した人気コミックを無料で公開することで、広告収入などの不当な利益を得てきたサイト『漫画村』の問題はご存知だろう。4月半ばになりサイトの閉鎖・移転や、政府によるプロバイダーへの接続遮断の呼びかけがなされるなど、風当たりが一気に強まっている。
いっぽう、漫画村側は「これは違法ではない」と強弁し、サイト閉鎖後も挑発的な主張を続けているとされる。現状、こうした著作権侵害ビジネス(というか犯罪商売)は、侵害者側にとってそれほどリスクが大きくないという事実を痛感させる話だ。
ところで私事となるが、本記事の筆者の私自身も、しばしば著作権侵害行為の被害者になっている。ルポライターである私は従来の雑誌や書籍の仕事に加えて、昨年からウェブ媒体への寄稿をかなり増やした。結果、電子データはコピペが簡単であるためなのか、自分の記事がネット上で大量に無断転載されるようになったのだ。
今回の記事は、中国ライターなのに中国の話を書かずまことに恐縮である。しかし、昨今の漫画村問題は氷山の一角であり、パクリと無断転載に泣いている人間は、こういうジャンル(=中国記事)の書き手にまで及んでいるのだという事実を、この場を借りてぜひお伝えをしておきたいのだ。
以下、なかでも特にひどかった例や笑える例をご紹介したうえで、当世のライターの権利と戦い方を考えてみることにしたい。
パクリ字幕を流すだけの「ネットのゴミ」
まずは昨年11月上旬の話だ。このとき、私は「見渡せば死屍累々、中国「しくじりベンチャー」列伝」という記事を書いたのだが、毎度おなじみ、当然ながらあちこちに無断転載されることになった。
全体的な傾向として、無断で転載されるケースが多いのは経済系と、外交・政治系の記事だ。前者はいわゆる意識高い系(になりたい系)、後者はネトウヨ系の人たちによって手がけられる例が多い。その主要なプラットフォームは、ひとつはブログ、もうひとつはYouTubeのテキスト動画である。
テキスト動画とは、ウェブニュースの文章をコピーしてYouTube上で字幕で流すだけの動画。そこそこYouTubeを見る人ならば一度は目にしたことがあるはずだ。何の芸もない「ゴミ」と呼ばざるを得ない動画にもかかわらず、パクられる側としては異常に腹が立ってくるという困ったやつである。
誰がこんなものを最後まで見るのかと思ってしまうが、実際のところ、アップする側も動画を最後まで見せたくて公開しているわけではないらしい。
仄聞したところでは、どこかの情報商材(ネット上で有料で売買されるハウツー情報)が、在宅で苦労をすることなくお金を稼げる方法のひとつとして推奨しているとのことだ。
すなわち、世間で話題のニュースや「中国のベンチャー」のような検索されやすい言葉をタイトルにした適当なテキスト動画(制作はめちゃくちゃ簡単だ)をYouTube上にアップしておけば、本当にその問題を調べている人がたまに間違えてクリックする。そのアクセスをお金に換えるという、セコすぎる真っ黒商売である。
泡沫のように消費されていくウェブの原稿とはいえ、自分がそれなりに苦労した成果物をセコい人たちの商売に使われるのはたまらないものがある。