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加計学園で“時の人” 柳瀬元首相秘書官のライフワークは「原発推進」

経済ニュースの「裏」を読む

2018/04/19
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 加計学園問題で一躍有名になった経産省の柳瀬唯夫経済産業審議官。獣医学部の新設について愛媛県職員や学園幹部らと面会したかどうかについて、国会で参考人として招致される見通しだ。

 柳瀬氏の経産官僚としてのライフワークは「原発推進」であり「獣医学部の新設」ではない。そして、原発推進については「記憶にない」と言えぬ証拠がある。原子力政策課長時代の2006年に自らが中心になって書いた報告書「原子力立国計画」だ。

加計学園について国会で答弁する柳瀬審議官 ©時事通信社

異例だった二度目の首相秘書官

柳瀬氏の出世作「原子力立国計画」(資源エネルギー庁より)

 1984年(昭和59年)東大法学部を卒業して通商産業省(現経済産業省)に入省した柳瀬氏は、2004年、エリートコースとされる資源エネルギー庁原子力政策課長に就任する。

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 そして2年後の2006年、原発推進を掲げた「原子力立国計画」をまとめた。これが高く評価されたのか、2008年には麻生政権の首相秘書官として官邸入り。2011年には経済産業政策局審議官になり、2012年に第二次安倍政権の首相秘書官として二度目の官邸入りを果たす。

 首相秘書官を二度務めるのは異例のことだ。そして2017年から現在に到るまで省内ナンバーツーの経済産業審議官を務めている。

 柳瀬氏が第二次安倍政権で二度目の首相秘書官(事務)になったのは、経産省の2年先輩で、現在も首相秘書官(政務)を務めている今井尚哉氏の引きがあったからだとされている。今井氏と柳瀬氏は、日下部聡・現資源エネルギー庁長官と並び、省内では「原発推進派」として知られる。

 59年入省の柳瀬氏が、57年入省の今井氏、日下部氏らに目をかけられたきっかけは「原子力立国計画」であり、柳瀬氏の出世作と言える。

 報告書の中身を見てみよう。

 2005年に閣議決定された「原子力政策大綱」に定めた基本目標である

・2030年以後も、発電電力量の30~40%程度以上の役割を期待
・核燃料サイクルを着実に推進
・高速増殖炉の2050年の商業ベース導入を目指す

 を実現するための具体策として

・電力自由化時代の原子力発電の新・増設、既設炉リプレース投資の実現
・高速増殖炉サイクルの早期実用化
・我が国原子力産業の国際展開支援
・放射性廃棄物対策の着実な推進

 を進めることを高らかに謳っている。