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労働組合が東京駅の自動販売機を空にした日

ブラック企業との「順法闘争」とは一体なんだったのか

2018/04/23

 先週4月18日、JR東京駅構内の自動販売機で売り切れが続出しているという情報がインターネットを駆け巡った。きっかけは労働組合・ブラック企業ユニオンによる次のツイートだ。

 このツイートは、4月23日現在で約6万リツイートに達しており、延べ800万を超えるユーザーが見たという。

普段の東京駅ではほとんど見かけない光景

赤い「売切」ランプが目立つ自動販売機

 実際、ホームによってもばらつきがあるが、駅構内の設置場所によってはかなり売り切れが目立っていたようで、ひどい機械では1台あたり7つも「売切」の赤いランプが点灯していた。これは普段の東京駅ではほとんど見かけることのない光景だ。

 今回の事態が起きたのは、JR東京駅構内の自動販売機の補充を担当する、サントリー食品インターナショナルグループの自動販売機大手「ジャパンビバレッジ東京」に勤務する社員10数名が労働組合に加盟し、「順法闘争」を行ったためだった。法律に従い休憩を1時間分取得し、残業を全く行わずに仕事を切り上げるという戦術である。

 もちろん、本数を少なめに入れるとか、仕事をサボタージュしているわけではない。単に法律や社内規則にのっとって自動販売機を回っただけで、補充の追いつかない機械が続出してしまったというわけである。普段から休憩すら取れず、いかに過密な業務を強いられていたかがわかるというものだろう。

ごまかされた残業代未払い

 なぜ、このような事態が起きたのだろうか。今回、ジャパンビバレッジ東京に対して順法闘争に踏み切ったのは、ブラック企業ユニオンという労働組合だ。現在、ジャパンビバレッジの現役社員14名が組合に加入して団体交渉をしているという。

 同社の問題は複数あるが、その一つが残業代の未払いだ。同社では、昨年12月まで、自動販売機の飲料を運搬・補充する外回りの業務に対して、残業代を支払っていなかった。ひどい場合は、1日4時間以上ただ働きをさせられている労働者もいた。

多くの乗降客が行き交う首都の玄関口・JR東京駅 ©iStock.com

 この違法な「定額働かせ放題」を是正するため、ブラック企業ユニオンの組合員が労働基準監督署に申告を行った。昨年12月に労働基準監督署が同社に対して、労働基準法違反の是正勧告を出している。

 ところが同社は、あろうことか「労基署とは見解が異なる」「残業代未払いはない」として、現役社員に対して、少額の金銭を支払うことで事態の収拾を図ろうとした。具体的には、社員一人ひとりを急に呼び出して面談を行い、根拠の不明瞭な金額を提示して、その場で強引に同意書を書かせるという手法である。ここで会社側は社員に、「これは残業代ではない。社長のご厚意だ」とまで説明していたという。

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