昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

大々々注目しているからこそ言いたい ファイターズは清宮幸太郎だけのチームじゃない

文春野球コラム ペナントレース2018

 ファイターズのGWシリーズ(5月2、3日楽天戦、4、5、6日ロッテ戦)は清宮幸太郎フィーバーだった。今季どこかのタイミングで1軍へコールアップされるとわかっていたが、大型連休のホーム5連戦は最高のタイミングだった。イースタンで結果が出始めたと思ったら、ちょうど近藤健介(軽度の右ふくらはぎ筋挫傷)、レアード(背中の張り)の戦線離脱で打線テコ入れの必要が生じた。天の配剤という感じがする。

 もちろん栗山英樹監督のことだから上げたからにはスタメンで使う。メディアもファンも色めきたった。新しいヒーロー物語はどんな幕開けだろう。5月2日、清宮幸太郎が「6番DH」で初めて1軍公式戦に名を連ねた試合、日本ハム球団は何と札幌ドーム来場者全員に「観戦証明書」を配布した。

5月2日、札幌ドーム来場者全員に配布された「観戦証明書」 ©えのきどいちろう

「CERTIFICATE/清宮幸太郎選手 札幌ドームデビュー戦 観戦証明書  貴方は、清宮幸太郎選手の札幌ドームデビュー戦をその目で目撃し、歴史の証人となったことをここに証明いたします。 北海道日本ハムファイターズ」

 これは日付が入ってないし、「札幌ドームデビュー戦」となってるからずいぶん前から準備していたものだろう。実際は「札幌ドームデビュー戦」どころか1軍デビュー戦なのだが、「札幌ドームデビュー戦」としておけば敵地でプロデビューしちゃった場合にも使える。まぁ、当たり前といえば当たり前だが、球団がいかに清宮デビューというイベントに力を入れていたかを物語るエピソードだ。もうGWのホーム5連戦なんて営業セクションは願ったり叶ったりだったと思う。僕はこういうことにシニカルな物言いはしない。心からよかった。球界にはスターが必要だ。華が必要だ。それが四方八方丸くおさまる、最高の形でデビューを飾ったのだ。

「岸vs清宮」のスター・ウォーズ

 やはりデビュー戦・初打席の衝撃を描写しておくべきだろう。楽天4回戦、2回裏2死走者なしの場面だ。登場曲は「スター・ウォーズのテーマ」。楽天・嶋基宏捕手に一礼して、軸足の足場を固め、ベースをコツンと一度叩いてメットをおさえ、ひとつ身体のひねりを入れるいつものルーティン。落ち着いている。マウンドにはエース格の岸孝之がいる。「岸vs清宮」のまさにスター・ウォーズだ。まず1球、まっすぐを外に外してきた。2球目は内懐にカーブ、これがストライク。清宮はカーブにまったく反応しない。僕はバッテリー、慎重な入りだなぁと思った。カウント1-1からの3球目、嶋は外に構えたが、ストレートが少し内側に入った。といっても岸のまっすぐだ。キレがある。清宮は2軍でプロのキレのある球に手こずってきたはずだ。

 それがスッとさばいた。インパクトは「ポンッ」ていう感じだ。いや、強打者のインパクトの瞬間は擬音語にすると大抵「グワッキーン!」とか「ガツン!」みたいな音なのだが、清宮は高校時代から「ポンッ」と柔らかく打つ。それが非凡だ。ヒザの使い方が柔らかく、間があるのだ。バットがスッと出て、スイングスピードがとんでもなく速い。「ポンッ」と打った当たりはセンターへ伸びていく。瞬間、皆がホームランだと思った。岸がマジかという表情で振り返る。打球はフェンス直撃、センターオーバーの2ベースだった。

1軍デビュー戦でプロ入り初安打を放った清宮幸太郎

 ちなみに打者・大谷翔平のデビュー戦も岸孝之(当時西武)だった。2013年3月29日の開幕・西武戦(西武ドーム)、大谷は8番ライトで先発出場し、第1打席はストレートの見逃がし三振だった。もっともその後、第2打席でストレートを打ち2ベース、第3打席はチェンジアップをライトに弾き返し、プロ初打点を挙げている。僕は5年前も球場で「フツーの高校生、岸の球なんて絶対打てないよ!」と大騒ぎしたものだが、今年もそっくり同じセリフを口にしていた。