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逆輸入Jリーガーが語る「英語力とサッカーの相関関係」

言葉は世界に飛び立つ武器になる。必要なのは習得のきっかけ作り

2018/05/13

 一人の元Jリーガーがいる。

 森安洋文、33歳。

 豪州No.1チームであるシドニーFCでプロサッカー選手のキャリアをスタートし、アジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)の舞台でも活躍。そこからJ2岐阜へ移籍した逆輸入選手で、3年前に現役を引退した。

サッカーと英語を結びつける場を提供

インタビューに応じる森安洋文(筆者撮影)

 彼は今、「スポーツ選手と言葉」という課題に取り組もうと奔走している。

 引退後、森安は関西で「Football Heroes」という会社を立ち上げた。目指すのは、子どもたちやプロを目指す選手たちに、サッカーと英語を結びつける場を提供することだ。

「いまは幼稚園から小学生の子どもたちを中心に、英語でサッカーを教える教室をメインに運営しています。他にも海外でプレーを考えている学生の支援活動も行っていますね」

 大切なのは、形式通りの学習ではなく、現場で武器になる“活きた英語”をいかに修得してもらうかだ。

「結局、プロになってから『よし海外に行こう』『じゃあ英語を勉強しないと』ではなかなか身につかないんです。座学や英会話教室の英語とスポーツの世界で求められる英語は、少し違う。それに加えて日本の場合は、多くの人の根底に『英語は勉強するもの』という苦手意識がある。それをどうにか変えたいんです。

 日本人は真面目で、話すときも完璧な文法で話そうとします。いま、日本の大学生に教えていると、TOEICで900点以上取るような子でも、通常の会話の速度では『How are you doing?』といったレベルのあいさつにポカーンとしてしまって、キャッチボールが成り立たないこともザラにある。生活の中での英会話の経験値が圧倒的に足りていないんです。せっかくしっかりしたベースがあるのに、すごくもったいないなと」

サッカー教室の指導風景

コーチを体験して「やっぱりまだ現役でやりたい」

 その想いの根底には、自分がプロ選手という夢を掴めたのは、言葉の力があったからだという考えがある。

 森安は1歳のころに父親の転勤の都合でアメリカに移住した。5歳になると兄を追うようにしてサッカーを始めた。小学校1年生から3年生の間は日本にもどり、その後、小4から中3までの6年間はまたアメリカでサッカーを続けた。高校3年間は日本に戻り、清水エスパルスユースに入団。右サイドバックのレギュラーとして活躍し、静岡県の国体選抜にも選出されるなど結果を残したが、プロとしてのキャリアは開けなかったという。

「なかなかJリーグから声がかからず、24歳の時にエスパルスユースのスクールから話をもらったんです。そこでコーチを2週間くらい体験させてもらった。コーチになるということは、引退ですよね。もうサッカー選手としては若くない年齢だったし、悩む部分も大きかった。

 でも、実際に指導をしてみると『やっぱりまだ現役でやりたい。このまま引退したら後悔しか残らない』という思いが消せなかったんです。幸い自分のキャリアのおかげで英語は話せたので、せっかくなら最後に英語圏で挑戦してみようかなと。それまで南半球は行ったことなかったので、オーストラリアが面白そうだなと思って、単身乗り込んだんです」

 

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