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東京駅の自販機ストライキは、なぜ「共感」を得たのか

この現象は、戦後日本社会の変容なのかもしれない

2018/05/20

労働組合に期待するしかない時代に

 最後に、なぜ今回のストライキがこれほどまでに支持されたのかを考察してみたい。「東京駅」というインパクト、「自販機」の身近さなど、特徴的なポイントが揃っていることもある。しかし、それだけではない。私はここで、終身雇用や年功賃金を前提とした戦後日本社会の変容を指摘したい。

 従来の日本社会では、企業に正社員として就職し、我慢して働きさえすれば、いずれ昇進や昇給が待ち受けていると考えられてきた。教育、住居、年金の問題も、年齢とともに上がる年功賃金が保障してくれていた。こうした特定の企業の正社員を、労働組合が守っていたのである。

 しかし、いまやこのような労務管理から外れた労働者が、一つの新しい階層を形成し始めている。正社員・非正規社員を問わず、昇進・昇格もほとんどなく、年功賃金も保障されない働き方だ。長時間労働を我慢しても報われることはない。転職しても、この働き方から抜け出すことはできない。

 ジャパンビバレッジでも、年齢に応じて上がる年齢給があるが、それも35歳で打ち止めだ。それ以上になると、ごく一部の労働者以外は昇給・昇格することはない。

 そうした中で働く若者たちにとって、もはや特定の会社に期待するのではなく、どこの会社で働いていようとも、労働組合で闘うことによって、法律を守らせ、賃金を上げ、残業時間を短くして、普通に生きられることを求める労働者の姿が、共感を得る理由だったのではないだろうか。

 

「どこで働くにしても、こうやって闘っていくしかない」

 最後に、先ほど登場してもらったAさんとBさんの印象的な発言を引用したい。

「ストライキは、労働者の『伝家の宝刀』と言われているらしいじゃないですか。強い思いを持った仲間が集まれば、会社や社会を変えることができるんだと実感しています」(Aさん)

「この会社を退職して別の会社に行っても、そこでもなんらかの問題はあるでしょうし、ブラック企業を転々とすることになるんじゃないですかね。だから、どこで働くにしても、こうやって組合で闘っていくしかないと思います。会社に不満を持っている人がこういう活動をできる、と届けられたのなら、それが今回のストライキの一番の収穫だと思います」(Bさん)

 なお、今回の順法闘争・ストライキを行ったブラック企業ユニオンでは、近日中に労働組合の権利と活用法についての説明会と、労働相談ホットラインを開催する。興味のある方は参加や連絡をしてみてはどうだろうか。