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ボクシング“山根節”で考える、ワンマン上司の「傾向」と「対策」

臨床心理士が分析する

2018/08/13

「これは神が山根明に与えた力だと思っている」

 日本ボクシング連盟会長を辞任表明をした後、沈黙していた山根明氏がメディアの前で再び口を開いた。

 このまま収束に向かうかと思われたが、“山根節”がまたも炸裂し始め、収まる気配はない。これだけ聞けば、妙に“神がかった”コメントだが、山根氏は大真面目だ。「それぐらい自分にはスタミナやパワーが漲っていて、まだまだやれる!」ということだろう。78歳という年齢を感じさせないパワーは、いったいどこからくるのか。

「死ぬまでアマチュアボクシングに関係します」

 会長も理事も辞任したと言いながら、今後について聞かれると「これからです。これからです」と妙に落ち着いているから不気味だ。身を引く気はないのか? すると続いたコメントが「悔いはない。死ぬまでアマチュアボクシングに関係します」。マイクに顔を寄せつつ、さもそれが当然とばかりに、さらりと言ってのけたではないか。

 男らしく潔く身を引くのかと思いきや、どうやら男らしく最後の最後まで筋を通す方を選んだようだ。

8月8日、辞任会見に臨んだ山根氏 ©AFLO

 だが、口を開いたのはこの時だけで、再び口を閉ざす。「辞任します」と発表しただけで何を辞任する気なのか判然とせず、告発者側に動揺が走った会見同様、その真意を問いただそうとするレポーターを前に口をつぐむ。独特の言い回しだけでなく、ほのめかしたり、勿体ぶるというコミュニケーションパターンで、相手にインパクトや動揺を与えるのも“山根流”人心掌握術なのか。

彼の生き甲斐にどこまで付き合えばいいのか

 当の本人は辞任したことで「すっきりしている」と言いながら、ちょっと苦々しそうな口調で、どこか忌々しそうな表情を目元に見せながら答えていた。おそらく本意ではないのだろう。何せ「アマチュアボクシングに命賭けとる」と言うように、山根氏にとってこれは生き甲斐なのだから。

 一方、反旗を翻した勢力にとっては、「すっきりする」どころではない。urbansea氏の「『オリンピックおじさん』森喜朗の"生き甲斐”に、どこまで付き合えばいいのか」という記事のタイトルではないが、きっと山根氏を告発した側は、彼の生き甲斐にいったいこの先、どこまで付き合えばいいのか、まだ振り回されるのかと、これまたうんざりしたのではないだろうか。

 数々の山根節から見えてくるのは、彼なりの美学だ。「男・山根」と豪語するように、男たるものこうあるべき、という強い信念がそこかしこに表れる。

 自信家で、活力があり活動的、理想とする生き様に対する憧れが人一倍強い。理論や理屈より感情が優先し、「黙って俺についてこい」的なタイプ。情に厚い分、好き嫌いも激しいだろう。それが依怙贔屓という形で表れたのだが、義理人情で生きているから、それを悪いとは思わない。真っ正直だから言わなくていいことまで、つい話してしまう。押しが強く支配するのを好み、目立ちたがり屋、誉められたがりで名誉が好き。ハチャメチャだけど、どこか憎めない。経営者で例えるなら、カリスマ経営者というよりワンマンタイプ。