大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)に、10代後半から30代のがん患者に特化した「AYA(あや)世代専用病棟」が開設されて約半年が過ぎた。国内2例目の開設を聞いて遠方からも患者が来院し、27床のベッドは満床に近い状態だというが、新たな課題も見えてきたという。AYA世代専用病棟の実状はどうなっているのか。同病院を取材した。

「AYA世代専用病棟」のナースステーション

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準備期間がゼロの状態からスタート

 4月9日、大阪市立総合医療センターのさくら15階病棟に「AYA世代専用病棟」が開設された。1病棟すべてをAYA世代専用としたこの病棟は27床の病床数に対し、24人の看護師で担当。看護師長、副師長以外に、実力経験ともに主任レベルの看護師8名を配置している。同病院がいかにこの病棟に注力しているかがうかがえる。

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 泉谷(いずたに)恵子さん(師長)は、開設1週間前の4月2日に、一般病棟の消化器外科から異動してきた。「AYA世代専用病棟は、準備期間がゼロの状態からスタートしなくてはいけなかったので、力のある看護師が多数配置されていると、看護部の配慮を感じました。抗がん剤の化学療法がはじめてのスタッフもいたので、顔合わせの2日からオープンの9日まで、スタッフ全員で毎日勉強しました」と開設前を振り返る。「AYA世代専用病棟では、治療や処置に詳しいだけではやっていけない。身体的なケアや介助、処置に加え、メンタルケアも当然できなくてはいけないので、長年看護師をやっている私でも勉強しなくてはいけないことばかりです」と泉谷看護師長は謙遜する。

泉谷恵子さん

「患者さんが前向きに自分の病気を受け入れている」と実感

 内科系から外科系まで、小児・成人すべての科から集められたスタッフは、オープン時から毎日、チームカンファレンスでそれぞれの意見を交わしている。「自分が気づいたことや、気になったことなどをお互いに言い合ううちに自然とカンファレンスの流れになるケースも多く、時間も質も充実したカンファレンスができている」と島﨑香さん(副師長)は話す。開設してまだ4カ月(取材当時)ということもあり、目に見えて治療への効果が現れているところまではいかないが、「患者さんが前向きに自分の病気を受け入れて治療に臨んでいる」と島﨑看護副師長は実感している。

島﨑香さん

 AYA世代専用病棟の開設以前は、未成年のがん患者が成人病棟に入院するケースや、「小児」とはいえない年齢のがん患者がベッド数不足から小児科病棟へ入院せざるを得ないケースもあったと泉谷看護師長は話す。「小さな子が泣いている病棟へ大人に近付いた世代の子たちが入院しなくてはいけない環境や、高齢の患者さんが多い中で、一人だけ未成年の子が過ごさなくてはいけない環境だった時は、患者さんやそのご家族から『どうにかならないか』と相談を受けたこともありました」