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「ドアを開けっ放し」「売上をピンハネ」ラオスのバス交通を日本の一企業が再建するまで

イーグルバス谷島賢社長インタビュー#2

2018/08/27
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国内の地方路線バスは8割が赤字経営で、その立て直しが求められている。海外でも事情は同じで、経済発展中のラオスでは首都ビエンチャンで路線バスを走らせるバス公社が経営危機を迎えていた。その再建役を担ったのは、運行データの見える化と徹底した顧客視線で赤字路線を黒字化したイーグルバスの谷島賢(まさる)社長だった。(全3回の2回目/#1より続く)

谷島賢社長 ©末永裕樹/文藝春秋

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バス事業の闇が見えてきた

 経済発展を遂げるラオスでは首都のビエンチャン市の人口が増え、乗用車やオートバイが急増し、交通渋滞をまねいている。その一方で、バス離れが進み、利用者が減少、国営のバス公社は経営危機に陥っていた。

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 埼玉県川越市に本社を置き、送迎・路線・観光バス事業を営むイーグルバス(売上12億5000万円、従業員220名)の谷島賢(まさる)社長は、JICA(国際協力機構)と「ラオス国ビエンチャンにおけるバス事業改善システム案件化調査」の業務委託契約を結び、2014年から調査を開始した。

「バス事業は三層構造になっていて、下からファイナンス(財務)、マネジメント、オペレーション(運行)になっています。当社のバス事業改善システムは、このオペレーションで運行データの見える化と顧客ニーズの吸い上げを行い、改善する手法です。ラオスでも同じように対応すればいいと思っていましたが、調べるとファイナンスやマネジメントにも多くの問題があり、闇が見えてきたのです」と、谷島社長は語る。

 ビエンチャンのバス公社は、市内バス11路線と都市間および国際路線13路線を運行している。過去に日本の無償資金協力で供与されたバス車両を中心に当時、122台を所有していたが、メンテナンスが不十分なためそのうち26台が修理中、19台が修理不能という状態だった。そのため、日本政府は2012年にもさらに無償で42台のバスを供与した。

日本が3年前贈呈した42台の新車 ©2018 EAGLE BUS CO., LTD

ドアを開けっ放しで走る

 イーグルバスの改善システムは、バスの乗降口に赤外線センサーとGPSを装備し、停留所ごとに乗降者数や乗客数、運行状況などのデータを収集することから始まる。ビエンチャンでも、2016年11月から車両にセンサーを取り付けて情報を集め始めた。

「見える化をすると、いろいろなことがわかってきました。運転士が休むとそのまま欠便になるので、毎日、運行台数が違う。バス停はあるものの、利用者が手を挙げた場所で乗せ、降りたいと言ったところで降ろす。いつでも乗れるようにドアを開けっ放しで走るなど、日本では考えられないことが明らかになりました。運転士には1日のノルマがあり、その金額分を公社に納めれば、残りは自分の報酬になる。公社は乗降者数がはっきりしないので放置してきましたが、実は収入の3割も公社に入っていないことがわかりました」

©2018 EAGLE BUS CO., LTD