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“オワコン扱い”と思いきや FAXが「海」で活躍してる理由

「産業遺産」は置かれた場所で咲いている

2018/09/03
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「いまFAXを使っているのは日本くらい」「時代遅れ」と、何かと敵視されるFAX。かくいう私も苦手だ。プリントアウトをしたり、送付状を付けたりで手間がかかる。現場からは「早くメールで統一して欲しい」という大合唱まで聞こえるほど。

 しかしそんな“オワコン”扱いされがちなFAXは、思いがけない場所で、意外なほど有効利用されている。

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お客さんを待たせないために「FAX」を使う

 FAXが今も活躍している代表的な業種が不動産業だ。

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「物件情報の電子化が進んでいても、図面などの物件資料はまだまだ紙が主流です。不動産業は加盟店同士の情報のやり取りも多いですが、それを一件一件PDFにして送るのはタイムロスになります。そこでFAX。解像度こそ低いですが、内容さえわかれば役目は果たせますので」(センチュリー21・ジャパン広報部の佐藤真之介さん)

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 また、物件オーナーの側にはまだまだFAXユーザーが多く、紙に慣れているため話が早いというメリットもあるとか。「FAXのほうが早い・慣れている・面倒じゃない、という向きもいらっしゃるんです」(佐藤さん)

出前館のハイテクを支えるローテク

 ローテクとは無縁そうなネット出前サービスの「出前館」でもFAXは使われている。利用者はインターネットから好きな飲食店とメニューを選んで注文するが、そのオーダーは「FAX」として加盟店に伝達されるのだ(続いて入る自動音声コールで確認)。

 わざわざ「FAX」で送ることによって電話での聞き間違いがなくなり、電話で応対する時間も省ける。さらにこんなメリットもある。

「弊社でも当初はメールで注文の確認を行っていましたが、個人商店ではオーダー確認を厨房内で行う店が多く、水や火、油を使う所で機械操作をするのは難しい。また、PCを使いこなせない方や、ネット環境が整っていないお店も多いため、もともと皆さんがお持ちのFAXを使うほうが合理的だったんです」(出前館を運営する、夢の街創造委員会広報部・藤本久美さん)

出前館から届くFAX

 2017年10月末ごろからアプリ受注がはじまり順次拡大している出前館。だが従来のFAX受注のシステムは当面、保っていくという。