本日9月26日は「ワープロの日」。いまからちょうど40年前の1978年9月26日、初の日本語ワードプロセッサー「JW-10」が東芝より発表された。標準価格は630万円。
その後、1980年5月に発表されたのが富士通製のワープロ機「OASYS100」だった。OASYSシリーズは後発だったにもかかわらず、ワープロ市場で一気にトップシェアに躍り出る。そのOASYSで採用されていたのが、富士通が独自に開発したキー配列規格「親指シフトキーボード」だった。
PCの高性能化が進んだことで……
OASYSは多くのユーザーから支持されたが、とりわけ重宝したのが文章を生業とする職業人たちだった。実は、文藝春秋社内においても過去にOASYSが支給されたことから、いまだに親指シフトユーザーが多い。
OASYSと物書きたちの幸せな関係は、その後、20年以上も続いた。ところが、OASYSは2000年に生産終了のときを迎える。PCの高性能化が進んだことでワープロ専用機の需要は減り、文書作成はマイクロソフト社のワードを始めとするワープロソフトが主流になっていたのだ。
とはいえ、親指シフトは失われた“過去のテクノロジー”ではない。いまでも熱烈な利用者に支えられ、PCの付属キーボードとして生き残っている。いったい何がそこまでユーザーを引きつけるのか。
親指シフト愛用者の“駆け込み寺”になっている富士通専門店「アクセス」の池田裕一店長に聞いた。
文筆業、弁護士、医師などの個人事業主が多い
――まずは、こちらのお店について教えてください。
池田 うちはパソコン専門店として、主に法人向けの富士通製PCを販売しています。以前はPC専門店がそれなりに存在していましたが、最近ではほとんど家電量販店かネット販売に代わってしまいましたね。うちは数少ない対面でPCを販売する店舗です。親指シフトの商品だけを扱っているわけではありませんが、独特の規格なので、他店ではわかるスタッフがいなくなってしまったんでしょう。
――親指シフトのユーザーは、どのような方が多いのでしょうか。
池田 当店にいらっしゃるのは、ワープロ時代から愛用されてきた、文筆業、弁護士、医師などの個人事業主が多いですね。現在のPCと違って、1台あたりの単価がとんでもなく高かった時代のワープロ専用機を買えた職業の方々です。お客さまの大半はリピーターです。うちの場合は個別のセッティングを行っています。キーボードだけならネットで買うことも可能ですが、ちょっと独特の設定が必要なので、身近な「パソコンに詳しい人」もよくわからないケースが多くて……(笑)。
ただ、みなさんこだわりが強いだけに、求めているものも千差万別。ソフトの挙動も含めてワープロ機のOASYSに限りなく近づけてほしいという方もいらっしゃいますし、外出先でも使えるように持ち運びできる軽いキーボードを使いたいという方もいます。
ですから、自動車ディーラーがお得意様の「カーカルテ」を用意してご要望に対応しているように、私もまずは個別のニーズをうかがった上で、それに合わせたサービスを提供できるように努力しています。