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「晴れ、ところにより紙吹雪」 関内駅1番出口から眺めたベイスターズ優勝パレードの記憶

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/18
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「晴れ、ところにより紙吹雪」の光景

「パレードはパシフィコ横浜出発、桜木町から尾上町通りを通ってスタジアムまで」。――聞いた瞬間耳を疑った。数日前、日本一になったことすらまだ信じられないのに、まさか一番見たかった尾上町通りでのパレードが本当に実現するとは思わなかった。1998年11月3日、パレード当日。僕の足は自然と横浜市営地下鉄上大岡駅に向かっていた。当時は東京に住んでいたけど、どんなに遠回りでもこのルートで関内まで行き、1番出口の階段を上って「その時」を迎えたかった。

「権藤監督泣けた」優勝パレード翌日のスポーツ報知 ©黒田創

 子供の頃は長く感じていた関内駅の改札から1番出口までの通路も、大人になるとどうってことはない。階段を上ると当然ながら人の波。人混みは好きじゃないけど、この日だけはそんなの一切気にならない。そこにいる全員がニコニコして、選手たちを乗せたバスが来るのを今か今かと待ち構えていた。

 ふと上を見上げると、通り沿いのビルの窓という窓すべてに人の姿が見える。そしてオフィスビルにもかかわらず、多くの窓が開くだけ開いている。みんな紙吹雪を撒こうとしているのだ。その瞬間、昔月刊ホエールズに載っていたニューヨーク・メッツがワールドシリーズを初制覇した時のエピソードを思い出した。優勝パレード当日、現地の新聞は天気予報を「晴れ、ところにより紙吹雪」と書いて祝福したという素敵なエピソードを。

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 その光景は文字通り「晴れ、ところにより紙吹雪」だった。特に1番出口から少しスタジアム側にある、横浜信用金庫の本店ビルから降り注ぐ紙の量が尋常じゃない。ああ、この瞬間がずっとずっと続いてくれればいいのに。先頭のオープンカーに座る権藤監督と山下大ちゃんはクールな表情。2台目は高木のとっつぁんと斉藤明夫コーチ。その後ろには2軍コーチにもかかわらず遠藤一彦が乗って手を振っている。そしてオープンバスに並ぶ選手の喜ぶ顔、顔、顔。ここにきてようやく優勝した実感が湧いてくる。周りの人たちは選手たちを追ってスタジアムの方へ大移動していたけど、僕はそれでもう十分だった。

1998年、ベイスターズ優勝パレード

 あれからもうすぐ20年になる。横浜市営地下鉄関内駅1番出口。もしもう一度ベイスターズの優勝パレードが見られる日が来たら、やっぱりこの場に立って眺めたいと思っている。

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