「さすがに今年は厳しいかもしれないな――」

 そんなことを考えながら向かったのは、10月13日に立川の昭和記念公園で行われた、第95回箱根駅伝予選会だ。

トラックの記録も各校のエース級と遜色ない

 本戦の出場枠を争う各校の熱い戦いはもちろん興味深いのだが、例年同じくらいに楽しみなのが学生連合チームに関わるランナーたちの走りだ。予選会で敗退した大学の中から、留学生を除く個人成績上位者を中心にチームが編成される。

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 チームとしての出場は無理でも、なんとか箱根駅伝本戦の経験をチームに持ち帰りたいというそれぞれのランナーの気持ちのこもった走りは、それだけで胸が熱くなる。

箱根駅伝予選会を走る東京大学・近藤秀一 ©文藝春秋

 そんな中でここ数年、毎年注目を集めていたランナーがいる。それが東京大学4年の近藤秀一だ。理由はもちろん、日本最難関の東大という環境に身を置きながら箱根駅伝でも活躍できるレベルの走力を備えているからだ。昨年2月には東京マラソンに挑戦し、2時間14分13秒の記録をマーク。トラックの記録も各校のエース級と遜色なく、勝負強さも兼ね備えている。

 ただ、冒頭のように、正直今年は学生連合への抜擢は難しいのではないかと思っていた。左ひざの故障を抱えて8月からは練習が継続して積めておらず、9月頭からは3週間近く全く走れなかった。ようやく10月に入って本格的な練習を再開し、何とかスタートラインに立てる状況に持ってきたようなぎりぎりのコンディションだったからだ。「予選会1週間前にはまともに走れるか半信半疑だった」と本人も語っている。

最後の最後でアクシデントに見舞われてきた

「駅伝を見るファンのひとたちも本当のトップ・オブ・トップだけから影響を受けるわけじゃない。自分みたいに強豪校とは違う環境でもこれだけやれるんだというのを見て、少しでも陸上競技や箱根駅伝に憧れをもってもらえたら嬉しいです」

 常々そう語っていた近藤だが、最終学年を迎える今年まで、一度も箱根本戦には出走できていない。これまで3年間とも学生連合のメンバーに選ばれながら、最後の最後でアクシデントに見舞われたからだ。

箱根駅伝予選会は、陸上自衛隊立川駐屯地で行われた。ハーフマラソン(21.0975km)を走り、各校上位10名の合計タイムで競う ©文藝春秋

 1年時はメンバーの中で予選会の記録が11番目と、ギリギリでエントリー漏れ。2年時は予選会では10番手に入りながら、その年の監督の意向で急遽、別の記録会が選考会として追加に。そこでの走りがもう一歩足りず、メンバーから外れた。

 満を持して迎えた昨年は、予選会の記録でトップ通過。後の記録会でも快走を見せ、1区にエントリー。各校のエースと勝負するはずが、まさかの直前のインフルエンザ罹患というアクシデントに見舞われた。

「去年は本当に絶望した、というか、それ以上に『まさか』という感じでした。緊張で体調を崩したのかな、くらいに思っていたので……」