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高田 かや
2017/01/26

男女交際禁止、結婚は村人が決めたおじさんと!? ――カルト村の恋愛事情。

過酷な労働、衝撃的なルール…村での青春を描いた『さよなら、カルト村。』秘話〈2〉

「所有のない社会」を目指すカルト村で生まれ、両親と離され、過酷な労働、空腹、体罰が当たり前の生活を送っていた少女時代の思い出を描いた実録コミックエッセイ『カルト村で生まれました。』でデビューした高田かやさん。

 この作品は、発売後すぐに新聞や雑誌など多くのメディアで紹介されて話題となり、「続きが読みたい」の声が殺到。そしてついにその続編となる、村で過ごした13歳から19歳までの青春期を描いた『さよなら、カルト村。思春期から村を出るまで』が完成しました。

「家畜のエサ用にもらった廃棄パンを食べて太る」編に続き、衝撃的な村のルールの真相など、深いお話を伺いました。

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さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

高田 かや(著)

文藝春秋
2017年1月30日 発売

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恐怖の調整結婚とは

――村の性教育って、どうだったんでしょう? 生理の知識などは、学校で教わったんですか? それとも村の世話係が思春期の子供たちを集めて、性の話をする機会があったのでしょうか。

 生理の知識など性教育は、村ではなく、一般の小学校で教わりました。中等部になったら女の子同士で上手なナプキンの付け方などを情報交換しあっていましたし、高等部ではタンポンが怖い子たちにタンポンに慣れている子が挿入の仕方を教えたりもしていました。普通の女子高みたいなノリだったと思います。世話係さんに性教育の話をされた記憶はないですね……。ブラのフィッティングは見てもらっていましたが。

――本作に登場する、「村は男女交際が禁止で、適齢期の若い女性は、村の人から年の離れたおじさんと結婚するよう促される」という「調整結婚」の話も恐ろしかったです。高田さんは拒否感を持っていたようですが、村には「そういうものだからしょうがない」と受け入れている女性が、結構多かったんですか?

村の恐ろしいルール「調整結婚」。

 自分の意志で村に入ったわけではない子供たちは別として、自ら希望して入村した大人は受け入れる人が多かったようです。そもそも「いろんな人にいろんな角度から自分という人間を見てもらって、その上でこうしようと決まったことがあれば、まずやってみよう」「一緒にやらせてください」と考える人が、一般社会を捨てて村に入るので、そういう村人は調整結婚もそんなに嫌ではなかったのでは……と思います。断ることもできたと聞いていますし、「結婚してから結婚相手と恋愛している」と語る村人もいました。

――お見合い結婚に近い感覚なんですか……ね? そうやって結婚した村人の離婚率は? 「離婚する夫婦が結構多くて、男性は離婚したあとまた若い女性と再婚する」というような話をどこかで読んだ記憶があるのですが、実際はどうだったんでしょう?

 離婚率の統計をとったことがないので分かりませんが、親が離婚している子は結構多かったです。なので、親の住んでいる村を尋ねるときは、「○○ちゃんの“両親”はどこの村に住んでるの?」と聞かずに「○○ちゃんの“親”はどこの村に住んでるの?」と聞くように気を遣っていました。村に入るとき意見が分かれて両親が離婚した子もいましたし、村人同士の親が離婚して村の中でお互いに再婚するなんてことも、よくある話でした。ただ、初婚の若い世話係さんが子持ちの年上男性と再婚したことはありましたが、子持ち同士の再婚もよくあったようなので、必ずしも若い女性とおじさんが再婚すると決まってはいなかったと思います。

特別講習は洗脳?

――『さよなら、カルト村。』には、村の批判本で潜入取材が行われていた「特別講習ミーティング」(特講)の様子も描かれています。批判本で「何回も同じ質問をされ、泣き出す人がいる」と読みましたが、高田さんも、こっそり批判本を読まれていたんですよね。ご自身が「特講」を受ける前に、本で「こういう儀式のようなものがある」と知っていましたか?

秘密にされていた「特講」の内情も明らかに!

 批判本は読んでいましたが、「特講」で行われる内容が書かれたものを読んだ記憶はないですね。「洗脳」と言われているとかは村の子から聞いたりしましたが……。とにかく「特講」は誰にもその内容を教えてもらえなくて、ただ「食事が美味しい」という噂だけは聞いていたので、食事が楽しみでした。

――実際に、「特講」で出された食事は美味しかったんですか? いつもとは違うメニューでした?

 それが、「特講」に行く前から「一体どんな絢爛豪華、珍味佳肴なご馳走だろうか」と頭の中で想像がふくらみすぎてしまって、実際はいつもの村の食事とほとんど同じだったので拍子抜けしました。楽しみにしている間に出来上がったイメージが現実を超えてしまうことってよくありますよね……。いつもより肉が厚いとか、おかずの種類が多いとか、ボリュームはあったと記憶しているのですが。「特講」では、出されたテーマに沿って、「なぜ?」「どうして?」とひたすら考える毎日でした。頭の切り替えができず、食事しながらも、つい「なぜ人は食事をするのだろう」「なぜ私は必要以上に食べて太るのだろう」「食べたいという“思い”と実際に必要な栄養素に違いがあるのはなぜだろう? いっそ“思い”なんてない方が身体にとっては良いんじゃないか」などと余計なことを考えていたので、なおさらメニューの記憶が曖昧なのだと思います。

野菜の絵が呼び起こした当時の記憶

――今回、カバーに野菜を描いてもらうことになり、「かわいくするために、野菜に顔を描いてほしい」とリクエストしたところ、「村で野菜の絵を描くときは擬人化するのが普通だったから、野菜に顔を描くことに拒否反応が出た」とおっしゃっていましたが……。

 村では一般の子を対象にした合宿を毎月行っていて、村の子もその合宿に参加して、世話役をしたり、集会の司会をしたりしていました。その中のカリキュラムとして、みんなでお面やポスターを作る機会が頻繁にあって、小さい頃から村で飼っている動物や野菜、果物がニコニコ笑っているお面を何枚も描いてきました。それをかぶって劇をしたり合唱をしたりするんです。

――当時のことを思い出して、拒否反応が出たんですかね。

 最初は私も、「野菜や果物がニコニコしている絵を村でいっぱい描いてきたから、今描くのが嫌なのかな」と思っていました。でもよく考えてみたら、その当時、どんなに気合を入れて描いた自信作でも、友達や上級生の描く絵と比べたら全然たいしたものじゃないように見えて、毎回自信を喪失して、敗北感を味わっていたんです。今回、「野菜に顔を描いてください」という依頼があったとき、どうしてもそのときの敗北感を思い出してしまい、何度描き直しても相変わらず昔と同じで拙く、変な絵に見えてきて……。たぶん、村で描いたときに人と比べてしまって、一度も満足出来る絵が描けなかったことからくる自己嫌悪のトラウマだったのかなと思います。今回のカバーは、とにかく当時の記憶を頭の隅に追いやり、「人と比べずに今の自分の線で描こう!」と意識して描きました。

――とてもかわいいカバーになったと思います。ところで、カルト村のエピソードは、とりあえずこれで描き終えたとのことですが、次回作のご予定は?

 クレアコミックエッセイルームで、春くらいから新連載を始める予定です。実は『さよなら、カルト村。』を描く直前、ふさおさんが糖尿病になってしまったんです。二人であれこれ試して、ふさおさんは体重を15キロ近く落とすことに成功し、今は数値も落ち着いて人並みの生活を送っています。私も便乗して5キロ痩せました(笑)。そんな夫婦のダイエット体験も含めた、新作を構想中です。そういえば、どんどん痩せていくふさおさんと暮らしながら描いたため、今回の漫画に登場するふさおさんのキャラも、ついついスリムに描いてしまって(笑)。実際よりややふっくら描くように気をつけていましたが、一箇所だけ校閲さんに「細すぎる」と指摘されて描き直しました(笑)。絵を描いていると、どうしても見たものが反映されてしまいますね。

村にいた頃、じゃがいもを収穫するもんぺ姿の高田さん。

 

 

高田かや

 

東京在住、射手座、B型。生まれてから19歳まで、カルト村で共同生活を送る。
村を出てから一般社会で知り合った男性と結婚。
村での実体験を回想して描いた作品を「クレアコミックエッセイルーム」に投稿したことがきっかけでデビュー。カルト村での初等部時代を描いた初の単行本『カルト村で生まれました。』が大きな話題に。本書が2冊目の単行本となる。