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「あなたの口座を閉鎖します」40年パリに暮らす私が遭遇した“落とし穴”

2018/11/28
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友人のフランス人新聞記者に事のあらましを話すと……

 憤懣やる方なく、家人(フランス人)に話すと、「やめときなさい。いじわるされるだけだから」とたしなめられた。

 それでも、まったく理不尽なので、友人のフランス人新聞記者と会った時に話した。すると、彼の両親にも同じようなことが起きたという。人が犬を噛めばニュースになるが、犬が人を噛んだだけではニュースにならない。こんなことは、犬がおしっこをひっかけた程度のことのようだ。

「残高不足にならないように注意していたのに……」と言うと、「だから嫌がられたんじゃないか? カードローンやリボ払いしてたら銀行は儲かるからね」と返された。スマホで、専門家による解説記事のようなものを見せてくれた。そこにはこんな文面が記されていた。

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「銀行は、理由を知らせずに口座を閉鎖できます。しばしば、預金が残っていても銀行にあまり利益をもたらさなかったり、費用が掛かりすぎるからという理由で行われます」

©iStock.com

 私は、この銀行に40年間ずっと口座を持ち続けていた。仕事に関わる入金はこの銀行に一本化していたが、最近はあまり大きなお金を立て替えるようなこともなくなったので、この口座には、税金・社会保障・電気・電話の料金など自動振替に十分なよう、毎月10万円ほど残していた。すべてはコンピュータ化されているし、何の手間もかからないはずだ。第一、口座は当座預金で、利子がつかず、逆に月1300円ほどの口座管理料を取られる。もちろん、私はその管理料をずっと払っていた。

 かつて利息非課税の預金は「貯蓄銀行」か「郵便局」でしかできなかったので、貯蓄は、貯蓄銀行でしていた。非課税枠を超えた部分はこの銀行に預けていたのだが、引っ越しで支店を変えたとき、銀行側のミスなのに手数料が生じ、それを勝手に貯蓄口座から引き出されたことがあったのでやめた。

 貯蓄銀行もいまは普通の銀行なので、閉められる当座口座もそちらに移すことにした。これは不幸中の幸いだった。

 ネットを見ていると、別の銀行だが、こんな書き込みがあった。

「動機もないのに口座を閉められた。他の銀行を見つけるのに2カ月かかった」

 この人も30年間同じ支店と取引し、住宅ローンを組んだこともあり、一度も残高不足もなかったという。

©iStock.com