昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「みんなで一緒にトイレ」から「ダメ上司」までーーその「同調圧力」が社会を殺す

それって「協調性」の問題なの?

2018/11/29

「俺たちは会社員だからね。上の言うことは絶対だから、思っていても言っちゃいけないことってあるんだよ。みんな黙って聞いてるんだし、もう少し協調性を持たないとなあ」

 社内で新しく導入される体制について異論を唱えたとき、上司からこう注意されたことがあります。人員不足により顧客から依頼された仕事が数千件も滞っているにも関わらず、「新規顧客」をさらに取り入れるためのサービスを展開し、その営業窓口に人員を集中させるという決定を下したのは、現場の状況を一切把握していない会社役員。

©iStock.com

クレームに発展したケースも多々あった

 当時25歳くらいだった私が勤めていたのは、債務整理などの法的サービス業を行う事務所でした。私は依頼者の借金の利息をゼロにする「和解交渉」を金融業者との間で行う部署に配属されていましたが、先述の通り、未だ和解に至っておらず数ヶ月、ひどければ数年間「放置状態」になっている依頼者の数は数千人~数万人にのぼりました。

 この放置状態が長く続くと、金融業者から裁判を起こされ、和解ができなくなるリスクが高まります。実際にクレームに発展したケースも多々ありました。数十万円の依頼料を支払っているのですから、顧客側からすれば当然の行動だと思います。そのため、私たちの部署では少しでも早く和解を進める必要があったのです。

©iStock.com

 しかしそんな中で、役員から「新規の客を取ってこい! 既存の顧客は放っておいて、営業に時間をかけろ!」という意味合いの指示があったことを部署の会議で知らされました。新規顧客の獲得数のノルマも与えられました。あまりにも無謀で、目先の利益しか考えていない命令であることはその場にいた誰もが分かっていたことです。

「新規顧客ばかり獲得しても、そのあとの業務がさばききれずにクレームになることは明らかですし、その責任はおそらく私たちの部署のせいになると思います。まずはせめて、現場の状況を上に説明させてもらうことはできないでしょうか」

 そう提案した私に対して、上司はものすごく面倒臭そうな態度をとり、「協調性」を理由にしてそれ以降まったく取り合ってもくれませんでした。