日本を震撼させた平成の凶悪事件。事件後に流れた歳月は犯人・遺族の心境にどのような変化をもたらすのか。ノンフィクションライター、小野一光氏が現場を歩く。今回は「平成16年~17年 福岡3女性連続強盗殺人事件」篇の第1回(全4回)。
事件が起きてから18年後に、その取材は実現した――。
福岡県北九州市にあるマンション。事前に聞いていた部屋番号のインターホンを押すと、「どうぞお入りください」と落ち着いた声が返ってくる。
声の主は、2005年1月18日に娘の福島啓子さん(当時23)を福岡市で殺害された、福島敏廣さん(67)である。
リビングに案内されると、私はまず祭壇で線香を上げさせてもらえないかとお願いした。
「ああ、こちらです」
隣の部屋にある大きな祭壇には、線香立てのそばに晴れ着姿の啓子さんの写真が飾られているのが目に入った。背後の棚には、福岡空港で旅客機に乗るための、ボーディングブリッジを操作する仕事の際に着ていた作業服姿で、ピースサインを出している写真などが、何枚も飾られている。
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