【新連載】達人の虎の巻 ~人生を変えた「座右の書」~ 第1回 谷内正太郎

「100点よりも51点の答案を」安倍外交の中心人物が読書で培った姿勢とは

谷内 正太郎 元国家安全保障局長

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各界で活躍する”達人”たちが、人生を変えた「座右の書」を紹介する新連載。達人たちはどのような本を読み、どのような影響を受けてきたのか、その半生とともに振り返る――。第1回は元外務次官にして初代国家安全保障局長を務めた谷内正太郎氏が登場。(取材・構成 稲泉連)

明確に1冊を挙げるのは難しい

 私は大学を卒業して外務省に入省して以来、40年弱にわたって外交の仕事に携わってきました。

 ただ、外交分野の仕事を志すに至る若い頃に、「強い印象を受けた本」や「人生を変えるような本」に出会ったかと聞かれると、明確に「これがそうだ」と1冊を挙げるのは難しい、という思いがありますね。世の中には良い本がたくさんありますから、それぞれに少しずつ影響を受けるうちに、自分の中に積み重なっていったものがあった、というのが正直なところです。

 とはいえ、それでも外交分野をテーマにした本の中で、今でも参考になったと感じているものを挙げるとすれば、イギリスの外交官だったハロルド・ニコルソンの『外交』(東京大学出版会)、歴史家であるE・H・カーの『危機の二十年』(岩波文庫)、そして、日本の自由民権運動の理論的支柱となった中江兆民の『三酔人経綸問答』(岩波文庫)の3冊になるでしょうか。

谷内正太郎(やち・しょうたろう)

1944(昭和19)年、富山県出身。東京大学法学部卒、同大学院法学政治学研究科修士課程修了。69年に外務省入省。ロサンゼルス総領事、条約局長、総合外交政策局長、外務事務次官などを歴任。主に安倍晋三政権の外交政策で中心的な役割を果たした。2014年から19年まで初代国家安全保障局長と内閣特別顧問(国家安全保障担当)を兼務している。20年より現職の富士通フューチャースタディーズ・センター理事長。著書に『外交の戦略と志』(産経新聞出版)などがある。

 外交官を退官した後、大学で6年ほど、教壇に立った時期がありました。そのとき、学生諸子にはこれらの3冊について、「外交のもはや古典的な作品として、必須の文献である」と伝えてきました。とりわけ『外交』と『危機の二十年』は、世界中の外交を志す人材が必ず読んでいる、いわば常識のような本であると言えます。

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source : 文藝春秋

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