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「東大卒エリート」の存在感は、なぜここまで薄くなったのか

2019年の論点100

2019/01/18
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「東大卒エリート」は外資系神話を信じている?

「東大卒エリート」は外資系神話を信じているフシがある。国内の銀行、生損保、商社よりも、若くして責任ある仕事を任され、自らビジネスを切り盛りできる。その結果、2〜3000万円プレーヤーとなって、プライドと満足感を得られる。

 やがて彼らは欧米の大学のビジネススクールでMBAを取得して経営者を夢見る。例えば、ハーバード大MBAホルダーの南場智子(ディー・エヌ・エー会長)や三木谷浩史(楽天会長)のように。

 経済系省庁、外資系企業に「東大卒エリート」が流れて割を食っているのが、大学院である。なかでも法、経済、理、工学部の天才、秀才は研究者になっても高い給料が望めないからなのか、外資系企業に就職する傾向が見られる。

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世界大学ランキングで東京大は40位台

 一方で研究者志向の者は、海外の大学で最先端研究に従事する。日本の研究環境が十分でないゆえ頭脳流出が起こった。これらが遠因になったのか、日本の大学からの優れた研究論文数が減少している。世界大学ランキングで東京大は40位台とさえない。「東大卒エリート」が国内で研究に取り組まなければ、ノーベル賞を取れる天才科学者は生まれない。

「東大卒エリート」は日本の国力(政治、経済、科学技術など)の浮沈のカギを握っている。ダメな官僚に育ったり、外資系に取られたり、頭脳流出することがないよう、エリートを育む環境を作るべきだろう。まずは政治・官僚の世界で、まっとうな「東大卒エリート」が社会の役に立つ仕事をすることだ。(敬称略)

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