Q 北方領土「2島先行返還を軸に」ってどういう意味ですか?

 シンガポールで安倍首相がプーチン大統領と会談を行い、北方領土のうち歯舞、色丹の「2島先行返還を軸に」交渉を加速させるというニュースを見ました。あとの2島はどうなるのでしょうか。(20代・男性・学生)

A 安倍政権は「4島返還」を断念したのです。

 はっきり言って、安倍政権は「4島返還」を断念したのです。国会で、安倍首相や河野外務大臣は、「北方領土はロシアによって不法に占拠されているという認識に変わりはないか」という質問に答えようとしませんでした。

 これまで日本政府は「北方4島はロシアによって不法に占領されている」と明言してロシアを怒らせてきました。ロシアとの間で2島返還がまとまりかけているときにロシアを刺激したくないのです。

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安倍晋三氏 ©文藝春秋

 ロシアのプーチン大統領は、「一切の前提条件なしに平和条約を結ぼう」と言い出しました。これは、1956年に発表された日ソ共同宣言での、「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」という約束を実現させようという意味です。平和条約を結べば歯舞群島と色丹島が返還されるのです。

 しかし、日本政府としては、これまで「4島返還」と言い続けてきましたから、あっさりと方針を変えるわけにはいきません。そこで、「とりあえず2島の先行返還を実現させる」と言っておき、あとの国後、択捉に関しては、「引き続き返還交渉を進める」という言い方か、あるいは「国後、択捉での経済協力を引き続き推進する」という言い方で、「これで終わりではありませんよ」と日本国内向けには説明しようとしているのです。

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