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「暫定水域」の扱いが重要であることは基礎中の基礎だが

 そして、韓国政府による信頼感を損なう行為はこれだけではない。11月20日には韓国海洋警察庁(日本の海上保安庁に相当)所属の警備艇が、1998年に締結された日韓漁業協定により、日韓両国が操業可能であると定められている「暫定水域」において、日本漁船に対して「操業を止めて海域を移動せよ」と命じる事態が起こっている。

 日韓両国の海上警察にとって、領土問題にもかかわる「暫定水域」の扱いが重要であることは基礎中の基礎であり、GPS等で自らの位置が簡単に確認できる現在ではおよそ考えにくい「ミス」であると言える。

 続いて12月20日には、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射する事態が起こっており、両国は現在までこの問題を通じて非難の応酬を行っている。

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 そして、この二つの日本海上で起こった事件には共通点がある。それは勃発直後から韓国政府側が日本政府側に対して事件を非公開にすることを求め、この要請が日本側に拒絶された結果、事件が明るみに出ている経緯である。

レーダー照射を受けた哨戒機と同型のP-1(海上自衛隊写真ギャラリーより)

一方的に日本に共助を求める姿勢は虫が良すぎる

 ここで重要なのは、韓国政府が現在の日本の状況を正確に認識していないように見えることだ。すなわち、先の大法院判決以降、日本国内では韓国を批判する世論が急激に高まり、日本政府も強硬な態度を見せるに至っている。このような状況の中、韓国政府が自らの責任で発生した問題に対して、日本側の協力を要請しても、その協力が容易に得られないことは火を見るより明らかである。

 そもそも海洋警察庁の警備艇をめぐる問題にせよ、韓国海軍の駆逐艦のレーダー照射にせよ、韓国政府が今日の日韓関係の悪化を深刻に受け止めていれば、防げたはずの問題である。にもかかわらず、一方的に日本に共助を求める韓国政府の姿勢はいささか虫が良すぎる、という他はない。

 それでは結局、韓国では何が起こっているのだろうか。答えは韓国政府内においては誰もこの「厄介な日韓関係」に関わる諸問題を真剣に統制しようとしていない状況である。「上からの統制」の不在は現場の緊張感の不足をもたらし、問題に直面した担当者はその場凌ぎの問題のもみ消しにのみ尽力する。大統領をはじめとする政権要人は対日関係に対する積極的な発言を避け、その責が自らに及ばないように口を噤む。結果、問題の責任は誰も問われることはなく、現場では緊張感のない状況が継続する。緊張感の不足は新たな問題を生み、日本側は韓国側への不信を更に強めることとなる。

 こうして日本側が声を荒げる中、韓国側が耳を塞ぎ続ける状況が継続する。日韓関係は2019年も漂流を続けることになりそうである。