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アジアカップの“ド本命”日本代表 「それでもキツい」優勝への3条件

過去4度の優勝から学べることとは

2019/01/05
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 優勝を義務づけられた大会、それが4年に1度のアジアカップである。

 アジアのサッカーをリードする立場として、半年前のロシアW杯でアジア勢唯一の決勝トーナメント進出を果たした立場として。

92年以来、2大会連続で優勝を逃したことがない

 アジア全体のレベルが拮抗し、FIFAランキング50位の日本代表より上位のイラン代表(29位)や前回大会優勝のオーストラリア(41位)もいれば、ライバルの韓国代表(53位)もいる。厳しい戦いが待っていることは百も承知だが、中継するテレビ朝日のキャッチフレーズ調に申せば「絶対に優勝しなければならない大会が、そこにはある」わけだ。森保一監督が就任して以降、順調にチームづくりを進めており、優勝候補のド本命だと言っていい。

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今大会でチームの中心として期待される堂安律(左)と中島翔哉 ©文藝春秋

 実際、1992年の広島大会で初優勝を飾って以降、2大会連続で優勝を逃がしたことはない。2000年レバノン大会、04年中国大会、11年カタール大会と3度頂点に立っている。前回のオーストラリア大会はベスト8に終わっているだけに、その悔しさを晴らしたい。

 今回から参加チームが16から24に拡大。先のクラブワールドカップの開催地でもあったUAEが舞台になる。

 優勝に必要なことは、過去が教えてくれる。

 過去のデータや事象、エピソードを引っ張り出しながら「優勝の条件」を考察したい。

ザッケローニ監督のもと、4度目の優勝を果たした2011年カタール大会 ©文藝春秋

(1)危機を乗り越える「キャプテン」

 日本がグループリーグを3戦全勝で決勝トーナメントに進んだのは96年UAE大会、前回と過去2大会あるが、いずれも決勝トーナメント1発目で敗退している。順調に進んでいったとしても、どこかに落とし穴があると考えたほうがいい。

 優勝した大会もすべてが順風満帆だったわけではない。

 例として挙げたいのが11年カタール大会。グループリーグ初戦のヨルダン戦は引き分け(1-1)に終わった。それも後半アディショナルタイムに吉田麻也がセットプレーのボールを押し込んで、何とか勝ち点1をもぎ取ったというゲームだった。

 試合前のロッカールームは、緊張感がどこか緩んでいてこれから戦いに向かうような雰囲気ではなかったという。アルベルト・ザッケローニ監督も、不満を示している。

 ここで行動に移したのがキャプテンの長谷部誠であった。第2戦のシリア戦(2-1)前に選手を呼び集めて、選手ミーティングを開いた。危機感を抱かせ、「日本代表の誇りを持って戦おう」と熱く呼びかけたそうだ。

 彼らは目の前にある危機を、発奮材料に転化する。シリア戦では相手のオフサイドが見逃されて接触した川島永嗣が一発レッドで退場。長谷部キャプテンは熱くなる味方をしずめて、一人で主審のもとに近寄ってから「しっかりとジャッジをお願いしたい」と伝えている。すると今度は日本にPKのチャンスが到来。本田圭佑が決めて、勝ち点3を手にした。ピッチ内外における長谷部のファインプレーが、チームに勢いをもたらしたと言える。そして長谷部キャプテンの求心力がグッと高まった大会にもなった。

 今大会は自身3度目のアジアカップとなる吉田麻也が新キャプテンとして臨む。その振る舞いも大きなカギを握る。

2011年のシリア戦、GK川島の一発退場の際、審判と話し込む長谷部誠 ©文藝春秋