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「つつましくて色っぽいというのが女の最高の色気」――樹木希林が遺した生き方のエッセンス

『一切なりゆき~樹木希林のことば~』より

2019/01/22

 昨年9月に亡くなった樹木希林さん。全身をがんで蝕まれながらも、それを感じさせない自然体な生き方が共感を呼んだ。

 そして、平成を代表する名女優は、対談の語り部としても一流だった。樹木希林さんの珠玉のメッセージをまとめた『一切なりゆき~樹木希林のことば~』から、ユーモラスで味わい深い発言を厳選して紹介する。

©文藝春秋

いってみりゃ私らは和え物の材料ですから

 自慢じゃないけど、家で台本広げないんですから。クタクタで、あの厚い電話帳みたいのを見ると、もう頭クラクラッとしてくるから、現場で覚えるんです。時々、ランスルーなんか抜かして、カメリハから、ちょっと本番いけそうだからいきましょうか、なんていう演出家がいるんですが、私一人で慌ててね。「ちょっと待ってください。三回やると思って覚えてますから」なんて。ま、非常に雑なつくり方というか、雑な役者というか……。

 台本がビシッと出来ていたから運がよかったんで、たいがいはドジってますから。いってみりゃ私らは和物(あえもの)の材料ですからね。ニシンを山椒で煮込んだり、ハモとキュウリを三杯酢にしたりってなもんです。腕のいいプロデューサーやディレクターが料理すればいいんだって。でも、年中裏切ってんですけどね。ニシンだと思わしといて何かサバみたいになってたり、うまそうなバナナだと思ってむいてみたら腐ってたりね。

(「筑紫哲也のテレビ現論 茶の間の神様」1987年7月)

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