文春オンライン

情報弱者の貧困層をバカにする人、搾取する人

オンラインサロン界隈を眺めていて思うこと

2019/02/05

あれだけ利益が出ていることをアピールしておきながら

 そこで大きな問題となるのが、判断能力が著しく低下した状態にある彼らを狙って、搾取しようとする輩です。みなさんの中にも、覚えがある方は多いのではないでしょうか。

 仮想通貨が大きく話題になっていたとき、「まだ仮想通貨やってないの?」「仮想通貨の市場規模は拡大し続けるから、長期投資をすれば順調に資産は増えますよ」などと煽り、ポジショントークを繰り広げていた人間たちがいたことを。今、その人間たちは仮想通貨への投資を続けているでしょうか。あれだけ利益が出ていることをアピールしておきながら、今や仮想通貨の「儲け話」をしている人はまったく見なくなりましたよね。しかも、散々仮想通貨を持ち上げていた手前言いづらいのでしょうか、その人たちは誰にも「これからは仮想通貨は儲からないだろう」と発言することもなく、静かに足を遠ざけたのです。もちろん、最後まで仮想通貨に投資するリスクについての説明をすることもなく。

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 これってすごく無責任な話だと思いませんか。彼らは自分のポジションを確立したり、ブログのPVを稼いで収益を得るため“だけ”に、知識を十分に持たない人たちを焚きつけ、利用したと言っても過言ではありません。事実、彼らのポジショントークを信じて仮想通貨に投資をしたり、彼らが主宰するオンラインサロンに入って失敗した人はたくさんいました。その中には、貧困に追い詰められ、焚きつけられて、判断能力が欠如してしまっている状態で藁にもすがるような思いで投資をした方もいたでしょう。

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だます側が儲かり、だまされる側が搾取される

 消費者問題に詳しい紀藤正樹弁護士に、「リスクを隠してオンラインサロンへの加入や、投資を呼びかける行為」についての問題点を聞きました。

「事業や投資にはリスクはつきものです。あえてリスクを隠す形で事業や投資に勧誘して契約させる行為は、消費者契約法上の取り消し理由にあたる場合があります。アフィリエイト広告や連鎖販売のように、勧誘者に利益が得られる場合もあり、いきおい勧誘文言が『必ずもうかる』『必ず成功する』『今しかない』などと断定的になりがちで、だます側が儲かり、だまされる側が搾取される構造がそこにあります。こうした断定的な勧誘の中には詐欺などの犯罪事案もあり、安易な儲け話には特に気を付けるべきです」

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 こうした図式がある以上、失敗してしまった人を「馬鹿だ」「自己責任だ」と無闇に叩くのは、私としてはおかしいと思うわけです。「失敗してしまった人」の裏側には、常に「搾取する側の人間」がいるということを知ってほしいのです。

 貧困者や何らかの事情により判断能力が低下している人々を利用した「搾取」のケースは、仮想通貨の斡旋だけにとどまりません。最近では「インフルエンサー」と呼ばれる有名人たちが「脱社畜しろ!」「稼ぎたければフリーランスになれ!」「オンラインサロンに入れ!」とひたすらに煽っているのを見るたびに「またやってる……」とついつい頭を抱えてしまいます。