文春オンライン

33歳女性が悟った「別れるのが苦手な人は、既婚者との恋愛をしちゃだめな人種」

Rule3 風と共に去るしかない 「愛人の品格」――#4

2019/02/26
note

元同級生の妻と中学生の息子がいる既婚男性と

 そんなことを言う彼女は、自分から終わりを決められなかった一人でもある。大学を出て、修士課程に進んだものの、修士論文を書かずにそのまま翻訳の会社に就職、ちょうどその頃から、飲み友達が連れてきたアパレル系の会社社長と付き合いだした。付き合いだした当初の相手の年齢は48歳、20歳以上の年の差のわりには、彼の見た目は若々しく、お似合いのカップルに見えたが、彼には元同級生の妻と中学生の息子がいた。

 本好きの彼女はそれなりに入れ込んで仕事をしていたし、週に1回の逢瀬はちょうどよく、意外に人目を気にせず食事や映画に連れて行ってくれる彼との付き合いにほとんど不満はなかった。水曜日か木曜日の夕方にどこかで待ち合わせて、深夜に彼女の家から帰っていくというのが日常となり、気づけば彼の年齢は55歳に届こうとしていた。お正月やお盆のイレギュラーを除くと、ほとんど彼が既婚者であるということも忘れるほどで、自分が30歳を過ぎたことにすら、しばらく無自覚に過ごした。

©iStock.com

 子供が成人したところで、あるいは妻とセックスをしていない期間が10年近く続いたところで、家族との生活を諦めることはない彼との付き合いには未来がないのは当たり前に受け入れていたが、未来がないと同時に終わりがないことも薄々感じてはいたらしい。将来をともにするわけでも、家族を作るわけでも、親や親族を巻き込んだ付き合いに発展するわけでもない関係で、意見の違いが決定的になるようなことはなかったし、責任がない分、お互いが相手を責めて喧嘩になることすらほとんどなかった。

ADVERTISEMENT

©iStock.com

 生活のほとんどは家族と過ごす彼の、面倒なところを引き受けるのは息子や妻であって、恋人である彼女は彼の靴下すら洗うことはない。一緒に使ったグラスや数枚のお皿を洗う程度で、不満が募ることはなかった。もともと結婚が視野に入っていないせいで、結婚の時期や形をきっかけに溝ができることも当然なく、面倒をみてくれる家族がいる彼は、逆に彼女のわがままや面倒にはとても寛大だった。