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山本 一郎
2017/02/02

小池百合子都政「まあ、面白ければいいんじゃない」現象

どうしてこんな罰ゲームになってしまったのか

 東京都議会議員選挙が6月23日告示、7月2日投開票と発表されました。東京都民以外の1億人にとって超どうでもいい話なので恐縮です。なんかエンターテイメントとしての東京都政が連日報じられっぱなしなので、ひとりの都民として本当に申し訳ない気分でいっぱいなんですよね。冒頭で謝っておきます。マジでごめんなさい。とかなんとか言っているうちに、築地市場においては仲卸業者の組織体である東卸(東京魚市場卸協同組合)で「豊洲への移転慎重派」の候補が理事長選挙で勝ちました。あれだけ危険だ不安だ煽られて業者が右往左往するところで選挙やったら、慎重になるのは当たり前です。そもそも不安煽ってたのは小池女史なんですけどね。彼女が共産党に乗せられなければとっくに市場は移転していたわけですし。

 私自身も、都知事選で小池百合子女史に投票した(してしまった)身として申せば、小池女史は好きなんですよね。ただ残念ながら、第一次安倍政権下で防衛大臣を55日で更迭されたときと同じような問題を小池女史は起こしていると思うんですよ。

 小池百合子女史は後先考えずに派手に騒ぐ系の無能ですので、メディア、とりわけテレビが好意的に取り上げてくれているうちは支持率も高くなるのは良いと思うのです。あのおばさん、テレビ映えだけはしますからね。1月に各メディアが行っている小池支持率自体は55%から7割に迫る数字まで出ていて、中身はともかく支持という意味ではうまくいっていると言えます。

小泉純一郎元首相ばりの舞台役者、小池女史

©getty

 評価されている政策も、「五輪」森喜朗さん「ドン」内田茂さんをはじめとした悪役商会みたいな守旧派との闘いが一番支持されているようで、郵政選挙で大見得を切って大勝した小泉純一郎元首相ばりの舞台役者感はあります。何しろ、年末に小池女史が「横浜アリーナで五輪競技やる」とブチ上げた翌週に横浜市長の林文子女史に「そんな話してねえから」と真っ二つにされているのに支持率高いとか、やっぱあのおばさんすげえとか思うわけですよ。何も考えずにノリで喋ってるとしか思えない。

 小池百合子女史ってのは、病的なまでに根回しや下交渉のできない人なんですよね。だから、デカい口を叩いた後で、話が後からひっくり返ってしまい、いろんなところに迷惑がかかる。でもその大口を叩くことそのものはテレビ視聴者ウケはするし、何しろ相手は悪人面の森喜朗さんや内田茂さんですから、都民がどっち支持するかといったら小池百合子女史ですよ。

 そういう支持率の高さが具体的な東京都政、都民の利益に与するような政策に繋がってくれればいいんですけど、目玉の政策が豊洲新市場移転問題と東京五輪ですから、どうにかならないのかと思います。「よーし、都議会に30人の小池派作っちゃうぞー」とか言ってて、大丈夫なんですかね。

フリースタイルで都政が混乱している件

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 そんな都議会議員選挙の前哨戦となる千代田区長選が2月5日に行われます。私、千代田区民ですがマジ困惑。と申しますか、有権者は4万8000人しか住んでません。助けて。先週も某メディアに「コラ山本、お前地元だろ。取材協力しろや」とかこき使われましたし、さっき子供を迎えに幼稚園にいったら青い服着てテレビカメラ抱えた泡沫候補の若い人たちがタムロしてて居心地が悪かったですし、町内会の寄り合いに少し顔を出したら世話役がインフルエンザに罹ったとかでそれどころではありませんでした。千代田区民が集まると、だいたいマンション投資や株の話か、どこそこの爺さん婆さんが死んだという話しかでません。皆さん、これが都議会前哨戦で名高い千代田区の現実ですよ。日本の首都東京の、中枢と言われる千代田区は金とコンクリートに塗れた限界集落みたいなもんです。馴染んでしまえば、とても居心地の良いのが千代田区。

 そんな千代田区で5選目を目指しているのが現役区長の石川さん。バックにいるのは小池女史。対する内田陣営は、去年の暮れに有力対抗馬とされた御仁が降りちゃったもんだから、右往左往の挙句、地元にこれといった挨拶もなく突然立候補した与謝野さんとこの甥っ子。誰。どうせ国政出たかったんだろ。千代田区長を腰掛にすんな。もう一人がつくば市長の兄を名乗る青い服を着た泡沫。誰。こうなると、現職有利は仕方ないです。

 俯瞰してみると、やっぱり小池百合子女史は運がいいですね。時代が彼女を呼んでいる、というか、ようやくお声がかかった、というか。本来ならば、それっぽい対抗馬が出てきて小池女史と拮抗すれば、つばぜり合いの果てに小池女史の問題発言をプレイバックされたり、小池失政の実績を見て詰られたりするんでしょう。が、強い野党から都政の中身を検証されるような話にすらならず、フリースタイルで都政が混乱していても致命傷には当面ならない。

 でもこれが東京都の現実なんですよ。都民の血税6000億かけた豊洲新市場がどうでもいいとまでは言わないけど、これから東京では物凄い数の高齢者が出ます。待機児童がいます。地震が来るかもしれませんね、耐震化はどうですか。首都高や湾岸地域などのインフラはどうなりますか。教育は。産業政策は。老朽化するビルの補修はどうするんですかね。たぶん、日本の産業と人口の集積地になっている首都圏に見合った政策をゆっくり考えられる状況には、小池女史自身が置かれていないのでしょう。

2040年の東京には100万人年寄りが増えている

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 2040年には東京の人口は少し減って1230万人のうち3分の1の411万人が65歳以上の高齢者になります。いまの千代田区民の数十倍っすね。いまがだいたい300万人ですから、100万人年寄りが増えるんですよ。レッツ年金暮らし。見渡すと、千葉も埼玉も神奈川も東京以上に老いて、働く人たちの住む東京が縮んでいく。中央線や東横線、西武線に東武線、奥の方は人が住まなくなって、空き家だらけになるわけですよ。

 そうなると、いままで通勤1時間半だ、2時間だといっていたベッドタウンの不動産が無価値になっていきます。お前らが35年ローンで頑張って返済したマイホームは、誰も買い手のつかない状態になり、そういう無価値の家が立ち並ぶ住宅地は引っ越したくてもできない老人しか住まないゴーストタウンになるのです。

 そういう残念な日本にしないためにも、日本最大の都市圏・東京は責任重大なんですよ。東京に住んでいる人たちの払う税金は他の地域よりも割高であって、多く払った税金が沖縄をはじめ地方経済のための補助金に使われているというのが現実です。不公平な感じもするけど、日本に生まれて日本人として役割を果たすためには、ちゃんと税金を払って日本全体が良くなるように政治に頑張ってもらわなければならない。いまの東京に必要なことは、東京一極集中批判のような「都市対農村」を煽るような言論に与することではなくて、長期のグランドデザインをどう考えるのか、将来の日本人に首都東京をどういう形で引き渡したいのかを考えるということじゃないかと思うんですよね。

 大変な局面に東京が陥っているわけなんですが、そのトップを決める選挙が小池百合子女史、増田寛也さんに鳥越俊太郎さんとか、どうしてこんな罰ゲームになってしまったのか。何というか、都民として本当に申し訳ない。申し訳ない。

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