今週からコラムを連載するプチ鹿島と申します。時事ネタ好きで「新聞」「週刊誌」を読むのが大好き。
このコラムでは、記事を読み比べて見えてくることを書いてみます。
有害物質といえばモリヨシロウと思いきや
まずはこちらの話題をおさらい。
「豊洲市場 地下水 有害物質ベンゼン、基準値79倍も検出」(毎日新聞・1月14日)
《東京都の築地市場(中央区)移転問題で、都が豊洲市場(江東区)で実施した地下水モニタリングの最終9回目の調査(暫定値)で、最大で環境基準値の79倍に当たる有害物質のベンゼンと、検出されてはいけないシアンが計数十カ所で検出された。》
基準値79倍の有害物質ベンゼン、検出されてはいけないシアン。有害物質といえば「モリヨシロウ」かと思っていましたが(あれも迷惑の基準値を超えてる)、今回の調査結果で大騒ぎ。
でも、この件の報道では違和感がある。
「なぜ今回だけ調査結果が劇的に違うの?」という疑問はよいとして、その見立てとして「調査会社が変わったから」とか「地下水管理システムが稼働したから」と、ニュースやワイドショーでは延々とやっていた。
私は思う。そんなことはどうでもいい。
だって、あそこはそもそも汚れた土地ではないか。東京ガスが石炭からガスを製造していた工場跡地。そういう場所。
そんな場所に市場を移転することを決めた。東京の発展につながるならそれでいい、と歴代の都知事は認めた。
いや、都知事だけではない。マスコミも、そして我々もなんとなく容認してしまったのである。「知ろうとしないことは罪」というが我々にも責任があるとしたらその点だ。
せめて罪滅ぼしとして、私(とあなた)が知ろうとしなくてはいけないのは「なぜ豊洲に移転しようとしたのか?」という点だろう。
繰り返すが「なるほど、地下水管理システムが稼働したから数値が上がったのか」なんて、どうでもいいのである。
「なぜ豊洲?」という東京新聞の根本的な疑問
「週刊文春」は豊洲移転について昨年の9月29日号で「その背景にあったのが、都が抱えてきた"ブラックボックス"だ。」と書いている。
もともと都は台場、青海、有明などの臨海副都心開発を推し進めてきたが、バブル崩壊で失敗に終わった。その特別会計は、累積5000億円超の大赤字を抱えていた。しかし1999年に石原慎太郎都知事が誕生すると、豊洲への移転構想が一気に動き出した。
記事では「元都庁幹部」が説明する。
《まず、石原氏はこれを黒字の羽田沖埋立事業会計などと統合させ、赤字を見えにくくした。そして、築地市場を豊洲に移転させて、超一等地の市場跡地を民間に高値で売却し、赤字削減と臨海再開発の一挙両得を狙ったのです。》(2016年9月29日号)
どうやら"臨海再開発"というキーワードが見えてくる。
次の記事は、私の疑問と同じもの。「東京新聞」である。以前「
「なぜ豊洲 疑念消えず」(東京新聞・1月20日)
《生鮮食品を扱う市場として、豊洲移転の是非を問う声の行きつく先は、「なぜガス工場跡を選んだのか」という疑問にほかならない。》
ああよかった。「なぜ豊洲?」という疑問は今でも恥ずかしくないようだ。
読んでいくと、東京ガスは当初土地を売ることを渋っていたことがわかる。
《ガス工場跡のため「土壌の問題もある」との懸念も指摘していた。》(同)
つまりこういうことだろう。東京都は臨海副都心の開発をするために豊洲のあの場所が欲しかった。土壌は二の次でぜひ手に入れたかった。それにプラスして立地の良い築地の跡地をどう利用しようかとワクワクしていた。再開発は誰かの都合にも良かったのだろうか?
日刊スポーツ「政界地獄耳」に耳を傾けると
今「疑問」を持って各記事を読むとそこまで想像できるが、"汚い土地に市場を移転する"ことを結果として容認してしまったのが私であり、あなたなのだ。
今回の調査結果を示したのは小池都知事の手柄だが、あえて言うと小池氏は「ガス工場跡地は汚い」という当たり前のことを証明しただけでもある。
つまり、こうなればなるほど「移転する」「移転しない」は、なおのこと速やかに小池都知事が決めるしかない。あらためて議題にしたのは小池氏だからだ。
しかし気になるのは次のような発言が出てきていること。
「小池都知事「豊洲移転が都議選争点」 地下水で有害物質検出」(スポーツ報知・1月16日)
どうやら都議選の争点にするつもりらしい。都議選がおこなわれるのは今年の夏だから「豊洲」はそれまで引っ張るのだろうか。小池派の候補なら絶好の大ネタとなる。問題化した自分たちの正義を唱えられる。
日刊スポーツのコラム「政界地獄耳」はこう書いた。
(スポーツ新聞といえば楽しいイメージがあるが、
「都議選の争点にはなっても政局の争点にしてはならない」(1月17日)
まったく同感である。
豊洲を政治利用するのなら、小池氏は歴代の都知事と変わらない。