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プロ野球選手でいられるのはほんの一瞬……ベイスターズ“青星寮”で過ごした青春の日々

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/07/19
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引退した今でも通っている「やなせ支店」のトンテキ定食

 ベイスターズの寮生にとって、横須賀中央といえば「やなせ支店」である。忘れもしない、20歳の誕生日の夜。その日は休み前にも関わらず、何も予定がなかった。見兼ねた下園さんが、食事に誘ってくれた。たまたま予定がなかった藤田さん(現楽天)や内藤さんにも声をかけ、連れて行ってくれたお店が、このやなせ支店。創業約50年の老舗トンカツ屋さんで、お店のドアを開けた瞬間、昭和の世界にタイムスリップしたかのような佇まいのお店である。ここで食べるトンテキ定食は、僕の死ぬ前に食べたいものランキングで長年1位を守り、ついに殿堂入りを果たした。(なんだそれ! どうでもいい! と思った読者の方。あと5分だけ俺の話を聞け〜♪)

 厚切りの豚肉をニンニク、タマネギと一緒に焼き、最後に赤ワインでフランベして香りづけをする。そこにソースをかけ、キャベツの上に乗せる。このソースとご飯の相性が、筒香と大野(中日)くらい、いい。ソースのかかったキャベツだけでもご飯を1杯いける。現役の頃は、ほぼ毎週月曜日の夜はここだった。好きすぎて、1日に2回行ったこともある。引退した今でも、片道1時間半以上かけて年に4回は行っている。注文はいつも、「山かけ、トンテキ、串カツ2本」。以前筒香と一緒に行った時は、まるで同じメニューを頼んで、「スイマセン、僕もその頼み方しちゃってます」と言っていた。それはそれで、誇らしい。

 高城(現オリックス)までは、やなせがちゃんと継承されていることが確認されているが、大阪に行ってしまった。現在の若手選手にちゃんと継承されているかが不安だが、寮の移転に伴って、行動範囲が横須賀中央から横浜へと移る可能性がある。同時に、やなせも横須賀中央も、ベイスターズの若手にとっての青春ではなくなってしまうのか。それは、なんとも悲しい話である。新しい寮は追浜だ。横須賀は軍港の街、追浜は日産工場のある街。この街でまた、ベイスターズの若手選手たちが青春を駆け抜けていく。人生の中で、プロ野球選手でいられるのは一瞬である。そんな刹那の中で、素敵な思い出もたくさん残る寮であってほしい。

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