1分書評の執筆陣に、人気ロックバンド「クリープハイプ」Vo&Gtの尾崎世界観さんが参加します。
掲載は毎月第2木曜日。クリープハイプの歌詞をも彷彿とさせる、特有の言葉使いで表現された書評にご注目下さい!
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どう考えても、最近通っている歯科医院の歯科助手の人数が多い。狭い院内に歯科助手が溢れている。歯科助手同士は過剰に声を掛け合って、簡単に終わってしまう様な仕事も細かく何人かで分担して、冗談を交えながら大袈裟に仕事を進めている。診療台の周りを歯科助手達が笑い声を上げながらバタバタと歩き回る。患者としての居場所が無くて困る。居場所が無いという事は悲しくて辛い。
そもそも、こんな場所に居場所なんか求めていないし、取れた銀歯が元通りにくっ付けばそれで良いのだから。
仰向けに寝かされて口を開けた状態というのは最高に無防備で、滑稽で、こうやって思考までもが弱って卑屈になっていく。
人と接する事は難しい。顔色を伺って言葉を選ぶのは本当に疲れる。
無くすのは悲しいから、悔しいから、恥ずかしいから、自分で捨ててしまいたくなる。
それでも、一瞬の酔いの様な、期待したり、祈ったり、信じたり。
まるで、好きになってから嫌いになるまでの一泊二日の小さな旅行の様な、そんな素晴らしい大切な物語です。