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幸福度の男女格差世界一は日本だった 「男なんだから俺が稼がなきゃ」が生きづらくさせている

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「男性は一生働くものだ」という思い込み

 昨今、「女性だけが育児や家事をすべきだ」と考える若者は少数派です。しかし「男性は一生働くものだ」という社会的思い込みも強い。

 仕事を中心とした社会において、男性の論理でさまざまなしくみが整えられていることは間違いありません。一方で、男性はその仕事社会から降りるという選択を認められていない。それが「ねじれ」として表われているのではないか。

 よく「女性には生理的な限界があるので、選択を迫られる」といわれます。しかし妊娠・出産・育児というライフイベントでキャリアの中断を迫られるのが女性の側だけというのはおかしい。たしかに妊娠・出産は女性にしかできません。しかし無事に赤ちゃんさえ生まれて、母体が回復すれば、女性が職場に復帰して、男性が育児や家事を主に担う役割を果たしてもいいはずです。

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 ある男子校で生徒たちに話をする機会を得たとき私は、「出産・育児は女性がやるものだと決めつけるのはおかしいんじゃないか」「キミたちが育児・家事を担うという選択もある」「キミたちにだって(企業組織に属しては)働かないという選択肢もある」ということを伝えました。「男性であること」にとらわれず、あらゆる思い込みを捨てて、あらゆる選択をテーブルの上に並べて自分の人生を決めてほしいと伝えました。

 女性の場合、誰と結婚しようと、自分が子供を妊娠・出産できる期間は限られます。しかし男性の場合、相手の女性の年齢によってその時期がずれる(実際には男性も年齢とともに女性を妊娠させられる確率が下がることが知られていますが)。その意味では、ライフプランを考えるうえで、女性よりも不確実性が高いともいえる。だからこそ、自分の人生がいつどんな展開になったとしても悔いのない選択ができるように、いまから入念に将来の生き方を想像してほしい。

 どんな大学に行くことになるのか、どんな職業に就くことになるのか、それも大事ですが、将来のパートナーと、どんなふうに人生を支え合うことができそうか、それをちょっとでいいからいまのうちからイメージしてほしいのです。

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「どんな仕事に就くの?」「何歳くらいで結婚するの?」「いつまで働くの?」「妻の職業は?」「何歳くらいで子供が欲しい?」「育休は取るの?」「子育てはどれくらいできると思う?」「家事はどれくらいやるつもり?」「子供は何人くらい欲しい?」「そもそも働くの?」などの問いを続けざまに投げかけました。

 要するに「キミはどうやって生きていきたいんだ?」「キミにとって本当に大事なものは何なんだ?」という問いです。

「『男なんだから俺が稼がなきゃ』という義務感で仕事をしていたら、仕事がうまくいかなくなったときにきっときつくなるよ。いろんな選択肢があるなかで、好き好んで自分はいまこれを選んでいるんだと言えるように、自分の選択に責任をもつことが大事」。そんな話もしました。

 21世紀のど真ん中を生きる男の子たちには、いまのうちからぜひとも考えておいてほしいことです。現在の親世代が子供のころにはそんなこと考えなかったかもしれません。だからこそ、子供たちにそういうことを考えさせる機会を意識的に設けなければいけないと思います。

幸福度の男女格差世界一は日本だった 「男なんだから俺が稼がなきゃ」が生きづらくさせている

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