この春、東大入学式で上野千鶴子名誉教授の祝辞が話題になった。東大の中におけるジェンダーギャップの存在を指摘するものだったが、実は今年、東大の合格者に占める女性比率は17.4%で、このところ2年連続で低下している。
アンバランスな男女比に対して、東大もただ手をこまねいているわけではない。
「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を、少なくとも30%程度にする」という政府方針を踏まえ、大学としても「2020年度までに学生の女性比率30%」を掲げている。
東大女子限定の給付奨学金も効果なし……
だが、2019年5月1日時点での学部学生における女性の割合は、19.3%。旧七帝大と呼ばれる国立大学の中でも最も低い。直近のデータでは、京都大学の女子学生比率は22.5%、一橋大学は28.4%、東京工業大学は13.2%、東京外国語大学は66.4%、慶應義塾大学は37.0%、早稲田大学は37.9%である。世界のトップ大学といわれるハーバード、イェール、プリンストン、スタンフォード、ケンブリッジ、オックスフォードの学部学生の男女比はほぼ半々。理系のイメージが強いマサチューセッツ工科大学でさえ、女子学生が約46%を占めている。
2010年に朝日新聞出版から発行されたムック『東大へ行こう。』の表紙に写っている東大生は全員女性。女子志願者を増やすためにイメージチェンジを狙う大学側の意図が明確に表れている。現役東大女子にそれぞれの母校で講演を行ってもらうように働きかけてもいる。女子高校生向けの大学説明会やオープンキャンパスも開催している。女子向けの大学案内冊子まで発行した。
1961年に発足した女性限定の同窓会「さつき会」も、大学と連携しながら東大女子支援、そして女子志願者増加のための活動を行っている。2012年には独自の奨学金制度を設けた。地方在住の女子を対象に、月額3万円を、4年間給付する。東大受験前に学業成績、経済状況、エッセイなどで選考し内定を出す「予約型」。返済の義務はない。これとは別に、入学後申請して在学中に月額3万円の補助が受けられる奨学金制度もある。こちらも返済の義務はない。