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日テレ1強の裏にあったフジテレビ研究とは?

フジテレビを2年で逆転した秘密を描く『日本テレビの「1秒戦略」』

2017/02/19

source : 週刊文春 2017年2月23日号

genre : エンタメ, 読書, メディア, 社会

『日本テレビの「1秒戦略」』(岩崎達也 著)

 いまや視聴率で絶対王者に君臨する日本テレビ。一体なぜ日本テレビはこんなにも強いのか。その答えの一つが本書に書かれている。

「これまでテレビマンの本は番組の演出術や裏話的なエピソードが多かったけど、そうではなく戦略が書かれていたから新鮮だったと言われて嬉しかったですね」

 岩崎達也さんは広告業界から転身し、1992年に日本テレビに中途入社。当時はフジテレビが絶頂期。日テレは2位に甘んじていた。入社直後、「フォーマット改革プロジェクト」が発足する。メンバーは13人。各部署から20代後半の若手を中心に集められた。彼らが行ったのは王者フジと日本テレビの2週間分の番組全てを見比べ、1分1秒まで視聴率の動きやCMを特大方眼紙に書き込むというアナログなものだった。

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「最初はホントにやるの?っていう感じですね。でも、そういう泥臭い手法でやったことが一番重要だったと思うんです。もし、業者にその作業を任せて、それを元に分析してもあんな結果はでなかった。視聴者の意識が体感できて、視聴者が見づらくなるような違和感がよく分かった。それを取り去ることで理想のフォーマットに近づけるんだと」

いわさきたつや/1956年群馬県生まれ。青山学院大学卒業後、博報堂入社。92年、日本テレビに転職。「それって、日テレ。」キャンペーンなどを手がける。現在、九州産業大学教授。著書に『実践メディア・コンテンツ論入門』などがある。

 フジテレビを徹底的に研究しても日テレはそれを決して真似するのではなく、「紙ヒコーキ理論」など独自の手法を編み出した。たとえば通常、00分から始まる番組を数分前倒しする「またぎ編成」などテレビの常識を覆すものだった。

「それを一番反発があったニュース番組でもやったことが大きかった。そのことで全社的な意識が変わりました。いままでのものを否定してもいいんだという空気ができた。視聴率トップになるという一つの目標に社員が一丸となりました」

 本書は青春物語を読んだときのような高揚感がある。若手たちの何かを変えようという熱気と、それを受け止め、なんとしてもすべてを実行するんだと腹をくくった上司たちの戦い。

「一つに絞った目標設定、強力なリーダー、新しい作り手、変わろうという空気、それが揃った時にイノベーションが起きたんです。いまはテレビが見られなくなったと言われますけど、まだまだ面白い。だからこの本はテレビの逆襲が始まればいいと思って書いたんです。1秒まで泥臭くこだわりながら作って争っていた。そうやって戦っている方が業界も盛り上がるし、面白いものや新しい戦略が生まれると思うんです」

フジテレビが視聴率1位を謳歌していた1990年代前半。2位に甘んじていた日本テレビは、氏家齊一郎社長のもと、1位奪取に動いた。13人の特命社員たちは、フジテレビの強さを解明すべく、視聴率グラフを片手に録画番組に日夜向う……。これまでなかった角度から描く日本テレビの強さの秘密。

日本テレビの「1秒戦略」 (小学館新書)

岩崎 達也(著)

小学館
2016年12月1日 発売

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